2019 年 31 巻 4 号 p. 275-284
【目的】地域の関節リウマチ(RA)診療/地域連携の現状を調査するとともに,患者の動き(方向/量)を規定する修正可能な因子を検討する.
【対象・方法】当院膠原病内科との勉強会参加メンバー22施設23部門に2017年1年間のRA診療/病診連携についてアンケート調査を行い,13施設14部門(病院1:クリニック12,内科9:整形外科5,専門医4:非専門医10)より回答を得た(回収率61%).患者を動かす3場面(発症時,悪化時,安定期)での各施設の診療方針(方向),紹介患者数(量)をアウトカムと定義して,これらを規定する因子を検討した.
【結果】回答の得られた施設全体での1年間のRA総患者数は1028人,前年からの継続832人,紹介初診130人,初発145人,逆紹介129人であった.専門施設にはRAの発症/悪化,非専門施設には患者の安定が主な紹介理由であった.初発患者の77%が専門施設で治療開始され,MTX/生物学的製剤が63%に使用されていた.非専門施設でもMTXが50%に使用されていた.専門医は3場面を自身で対応するのに対し,非専門医の診療方針(方向)は「経験患者数」が規定していた.経験患者数20人程度で,初発患者の初期治療にトライする傾向がみられ,50人程度で専門医に匹敵する治療が提供されていた.紹介患者数(量)は「逆紹介患者数」と強い相関がみられた.
【結論】逆紹介患者数を意識しながら,それぞれにふさわしい患者を紹介しあって経験患者数を増やすことは,地域全体のリウマチ診療の質を高め,地域格差を縮小させる可能性がある.具体的には,経験患者数20人以上を一緒に目指してくれる少人数の信頼できる非専門医と密に連携することが,特に専門医/専門施設の少ない地域では効率がよいと思われる.