臨床リウマチ
Online ISSN : 2189-0595
Print ISSN : 0914-8760
ISSN-L : 0914-8760
誌上ワークショップ 関節リウマチ precision medicineの可能性
IL-6阻害薬とバイオマーカー
藤本 穣仲 哲治
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 32 巻 4 号 p. 323-330

詳細
抄録

 IL-6は炎症病変部に存在するさまざまな細胞で産生され,病変部ならびに全身の免疫応答の制御に関わる炎症性サイトカインのひとつである.多彩な機能をもつIL-6は,関節リウマチをはじめとする免疫疾患の病態形成に深く関与し,治療標的として重要である.IL-6は肝細胞におけるCRP等の急性期蛋白合成に必須の作用をもつため,IL-6阻害剤投与の効果はまずCRPの正常化にあらわれる.またIL-6阻害剤はSAA発現誘導も抑制するため,二次性アミロイドーシスの治療に有用と期待される.IL-6はB細胞系列の抗体産生を促進させるため,その阻害は自己抗体を含む抗体産生の抑制につながる.また,IL-6はTh17やTfh細胞の分化誘導に関わることから,IL-6阻害剤は獲得免疫応答の調節を通じて,免疫病態を改善させる可能性がある.これらの薬理作用は他のバイオ製剤とは異なるIL-6阻害剤の特性であり,IL-6阻害薬が幅広い免疫病態に適用される理由になると考えられる.しかしながら,他のバイオ製剤と同様に,IL-6阻害剤に応答しない難治症例が一定の割合で存在する.IL-6阻害薬をどのような病態に積極的に活用すべきであるか,効果予測のためのバイオマーカーが精力的に探索されているが,確立されたマーカーは現在のところ存在しない.また,IL-6阻害薬使用中の問題として,CRPなどの既存のバイオマーカーが正常化し,疾患活動性の評価や感染等の合併症の検出が困難になることがあげられる.われわれのグループが炎症バイオマーカーとして同定したLRG(Leucine-rich α2 glycoprotein)は,CRPで評価が困難な炎症病態の把握に有用であり,IL-6阻害剤使用時のバイオマーカーとして活用が期待される.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
前の記事
feedback
Top