2021 年 33 巻 3 号 p. 189-197
家族性地中海熱(familial mediterranean fever: FMF)とは周期的に発熱,漿膜炎症状を繰り返す自己炎症性疾患(autoinflammatory diseases)である.地中海沿岸地域を起源とする民族に多いが,本邦でも臨床症状並びに遺伝子解析によりFMFと診断された症例の集積が進められている.今回我々は15歳から周期的に消化管症状を繰り返し,婦人科や消化器内科にて診断が難渋し,当科での遺伝子解析とコルヒチンの効果判定により,FMFと診断した一例を報告する.同症例に家族歴はないが,当人が発症時未成年であり遺伝子検査にてFMFの典型例に多いとされるMEFV遺伝子のexon10:M694Iヘテロ接合体が検出されたことから,両親の遺伝子検査も施行したところ,父親が無症状であるがM694Iヘテロ接合体が検出された.本邦ではFMFは孤発例が多いとされるが,本症例の父親の様に,集計されている以上に多くのFMFの予備軍が潜伏している可能性が考えられる.また本症例は正常人でも16~23%程度のアレル頻度であることが報告されているexon2:E148Qヘテロ接合体も検出されており,母親も無症状であるが,同遺伝子多型が検出されている.本邦は海外例と比し,FMF発症の遅延性や症状の軽症が指摘されており,FMF患者の両親への遺伝子検査を積極的に行う必要性があるか検討されている.