臨床リウマチ
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原著
間質性肺疾患合併の関節リウマチ患者に対するJAK阻害薬の有効性と安全性の検討
礒田 健太郎辻井 敦子原田 芳徳吉村 麻衣子松岡 秀俊中林 晃彦森 啓悦佐藤 恵長野 広通金 東燮吉野谷 清和大島 至郎
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2022 年 34 巻 1 号 p. 76-86

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抄録

 目的:間質性肺疾患(interstitial lung disease: ILD)は関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)患者の予後に影響しうる重大な合併症であるが,ILD合併RAに対する治療法は確立していない.本研究の目的は新規治療薬Janus kinase(JAK)阻害薬のILD合併RA患者に対する有効性と安全性を明らかにすることである.

 対象・方法:非介入の後向き観察研究で,JAK阻害薬で治療されたILD合併RA患者26例を対象とした.ILDは胸部CTによって線維化病変とすりガラス病変を各々数値化し,JAK阻害薬開始12か月後の各スコアの変化を比較した.安全性評価項目はILDの急性増悪と入院を要する重症感染症の発生とした.

 結果:JAK阻害薬を12か月以上継続できたのは全26例中17例で,このうち12例で肺病変の評価が行われた.JAK阻害薬開始から12ヶ月後のすりガラス病変スコアは低下したが(p=0.037),線維化病変スコアに変化はなかった(p=0.813).12ヶ月後のDAS28-CRPは低下し(p <0.001),ステロイド量は減少していた(p=0.031).全26例における重症感染症発生は2回(同一例)(6.4/100人・年)であり,既存ILDの急性増悪はなかった.

 結論:本研究は短期間における少数例での検討ではあるが,JAK阻害薬はRA-ILD患者にとって治療選択肢のひとつになる可能性があることを示した.

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© 2022 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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