臨床リウマチ
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34 巻, 1 号
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誌説
  • 松野 博明
    2022 年 34 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー
  • 黒江 ゆり子, 房間 美恵
    2022 年 34 巻 1 号 p. 4-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     生・老・病・死は人間を取り囲む環境がどのように変化したとしても,人間にとって避けることのできない永遠のテーマであろう.人は誰でも病気になる可能性をもっており,病気はどのようなものでもChronicity(慢性性)という特性をもつ可能性がある.すなわち,私たちは,すでにさまざまな長期にわたる病気とともに生きているのである.現代社会の求めるものが,効率的に働き利益を上げることや活動的かつ積極的に日々を送ることであるとすれば,病気や障がいにより,それまでのように効率的に働けなくなったり,日々を活動的に過ごすことができなくなったりすることは決してめずらしいことではない.そうなると,私たちは社会的に受け入れられるための特性の一部を失い,自分の特質が他者のそれとは異なっており,社会の期待に応えることができなくなる.そのとき,人は受け入れられた状態から無視された存在となり,これがスティグマに繋がる.場合によっては,自分の存在に価値を見出すことができずに深い悲しみを抱き,社会的に孤立することもある.しかしながら,人生においてこのような不測の出来事に遭遇するのは,病気や障がいだけではもちろんない.私たちは日常に生じるさまざまな危機的体験のなかで,ひとり一人がもつ回復力(レジリエンスresilience)を礎として,その先の日常を歩み続けようとする.

     本稿では,RAにおける心理社会的支援について,セルフスティグマとそれを乗り越える力としてのレジリエンスをふまえて考えてみようと思う.

総説
  • 伊藤 聡
    2022 年 34 巻 1 号 p. 16-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)では8種の生物学的製剤(bDMARDs)が使用可能で,選択因子は,年齢,メトトレキサート(MTX)の併用なしで有効か.腎不全や呼吸器病変など合併時や妊娠希望時に使用可能か.点滴静注,皮下注.半減期.感染症状のマスク.速効性.効果減弱.価格.バイオフリー(BF),テーパリング,スペーシングが可能か.発症直後から開始できるか.などがある.

    1. インフリキシマブ

     静注のキメラ型抗TNF抗体で効果発現が早く増量・短縮で高疾患活動性でも有効.BFの実績あり.

    2. エタネルセプト

     TNFの可溶性受容体で半減期が短く中止で早く効果が切れ高齢者で使用可能.妊娠希望時も使用可能.

    3. アダリムマブ

     完全ヒト型抗TNF抗体.MTX併用で有効性が得られる.早期使用での寛解導入,BFの達成と維持が可能.

    4. トシリズマブ(TCZ)

     抗IL-6受容体抗体でMTXなしで有効.感染症のマスキングに注意.

    5. アバタセプト

     T細胞選択的共刺激調節剤で効果発現が穏やかだが安全性に優れている.MTXなしで有効で間質性肺炎合併例でも使用可能.

    6. ゴリムマブ

     完全ヒト型の抗TNF抗体でMTXなしで有効.効果発現は穏やかだが免疫原性が低く効果減弱が少ない.

    7. セルトリズマブペゴル

     ポリエチレングリコール化抗TNF抗体で胎盤通過性,乳汁分泌が無く妊娠可能年齢の女性で使用可能.高疾患活動性の高齢発症RAで有効.

    8. サリルマブ

     2剤目の抗IL-6受容体抗体でTCZの効果減弱例,副作用による脱落例で有効.

特集 RA発症前の病態解析の進歩
  • 川上 純
    2022 年 34 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism: EULAR)はRA発症前の状況を,①“遺伝要因リスクと環境要因リスクはあるが,検査値異常や炎症性関節炎の症状や所見がない”,②“ACPAやリウマトイド因子などの検査値異常はあるが,炎症性関節炎の症状や所見がない”,③“関節痛や朝のこわばりなど炎症性関節炎の症状はあるが,臨床的および画像的に滑膜炎がない”,④“画像的に滑膜炎はあるが,臨床的に明らかな関節炎がない”,⑤“臨床的に明らかな関節炎があるが,RAの分類基準を満たしていない”のステップがあり,これらを“Pre-RA”,“Pre-clinical RA”,“Inflammatory arthralgia”,“Autoantibody-positive arthralgia”,“Undifferentiated arthritis”で表現することを提案している.RA治療における“window of opportunity”と“treat-to-target”を考えると,RA発症前の病態を出来るだけ正確に把握し,個々人における“RA発症リスク”を出来るだけ正確に予測することは,今後の(超)早期治療導入にも直結する極めて重要な研究テーマである.

  • 高地 雄太
    2022 年 34 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチは,代表的な多因子自己免疫疾患である.分子標的薬の登場によって,病勢の完全抑制が現実的な目標となったが,そのためには早期診断および病態に応じた適切な治療選択が重要である.ゲノムワイド関連解析によって,100を超える疾患リスク領域が同定されたが,これらのゲノム情報を利用することによって,関節リウマチの発症期における病態評価が期待されている.本稿では,1)最大の遺伝因子であるHLA-DRB1多型と,2)遺伝因子の積み重なりを評価するpolygenic risk score(PRS)について,疾患発症期における病態評価に利用可能か,最近の知見を踏まえて論じる.

  • 辻 良香, 玉井 慎美, 川上 純
    2022 年 34 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(Rheumatoid arthritis: RA)の発症に環境要因が占める割合は約7割と影響が大きく,環境要因に起因する免疫寛容の破綻がRA発症の端緒となる.最も重要な環境要因は喫煙であり,そのほか歯周病を始めとしたマイクロバイオーム,PM2.5やシリカなどの大気汚染物質,食事,性ホルモンなどRA発症との関連が推定される要因は多岐に渡り,その病態が徐々に解明されつつある.喫煙は量や期間が長いほど影響が強いが,中止によりリスク軽減の可能性が示されている.また幼少期の受動喫煙の影響が示唆されている.歯周病は特定の菌種のみならず,それ自体がRA発症に関与する可能性が示唆されている.腸内細菌叢に関してはRAでは健常者と異なる細菌叢を有しておりRAハイリスク者の同定に有用となる可能性が示唆されると同時に機能的解析が進んでいる.PM2.5やシリカなどの大気汚染物質は様々な健康被害が報告されており,自己免疫疾患であるRAも例外ではない.これら環境要因の知見はRAハイリスク者に対して予防介入につながり得る可能性がある.RAの真の克服への道には“早期診断・早期治療”に加え“予防介入”が不可欠であると考えられ,今後も知見の集積が期待される.

  • 藤井 隆夫
    2022 年 34 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)は「抗シトルリン化蛋白抗体(anti-citrullinated protein antibodies, ACPA)を特徴とする全身性の自己免疫疾患」と考えることができる.ACPAやリウマトイド因子(rheumatoid factor, RF)はRA発症の10年以上前から血清中に存在することが知られているが,発症が近づくにつれてACPAのepitope spreadingが生じ発症直前に抗体価が急上昇する.一方,明らかな関節炎がなくともACPAは皮質骨の傷害を誘導する可能性が報告されている.しかしACPA陽性のみでRA病態をすべて説明することは不可能で,持続性の滑膜炎や重篤な骨破壊には炎症性サイトカインの活性化が必須である.ACPAを含む免疫複合体がFcγレセプターに認識されてマクロファージからTNF-αやIL-6を分泌することが知られており,この過程にはRFの関与も指摘されている.すなわちRA自己抗体陽性者は「pre-RA」と考えられることができるため,これらを対象としてリツキシマブやアバタセプトを用いたRA発症の予防を目的とした臨床試験が行われている.ACPAは炎症性サイトカインと異なりRAに特異性が高い.RA発症を決定づける後天的素因を明確にすることが課題となるが,自己抗体はRA発症前の病態を考える上でも臨床的意義に重要である.

  • 池田 啓, 小島 祥太郎, 岩本 太郎
    2022 年 34 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     RAの発症において,臨床的関節炎を来す前の段階はしばしばPreclinical RAと呼ばれる.Preclinical RAでは,関節エコー・MRIを用いることにより様々な画像所見が認められる.RAの特徴的な病態である滑膜炎および骨びらんに加え,近年腱鞘滑膜炎ならびに腱周囲炎が認められることが分かってきた.関節炎に先行して関節外炎症が先行し得ることは,RAの病態を考える上で重要な知見であり注目を集めている.

原著
  • 定松 修一, 和田 周二, 田口 浩之, 小原 司, 森 涼子, 木本 国晴, 弓立 恭子, 永井 美緒, 水木 伸一
    2022 年 34 巻 1 号 p. 67-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)患者の自然災害時の被災環境における日常生活の現状,避難行動について明らかにすること.

    【対象と方法】平成30年7月豪雨の被災地域に住所があり,平成30年4月~6月に松山赤十字病院リウマチ膠原病センターを受診したRA患者90名を対象とした.令和2年6月1日~30日にアンケートを郵送し,被災状況,避難行動,日常生活動作能力の変化について質問した.返信・同意のあった患者について,回答とリウマチ科受診時の臨床データを解析した.

    【結果】60名より回答を得た(回収率67%).女性が82%,平均年齢は67歳,平均RA罹病期間は17年であった.被災・避難した患者は29名(48%)であった.被災時の生活について回答のあった25名のうち,何らかの動作ができにくくなったと回答したものは14名(56%)であり,災害前の機能障害度が高いことと関連していた(Mann-Whitney検定,p値<0.01).避難した患者は11名で,避難場所は親戚・知人宅が一般避難所より多かった.避難場所の環境は,63%で水道が使用不可で,25%は段差等で移動に不便を感じていた.また83%は避難場所において,運動をしなかったと回答した.

    【結論】自然災害において,日常生活動作能力が悪化するRA患者は多い.避難場所の選択・あり方について,個々人の状態に合わせて検討しておかなければならない.

  • 礒田 健太郎, 辻井 敦子, 原田 芳徳, 吉村 麻衣子, 松岡 秀俊, 中林 晃彦, 森 啓悦, 佐藤 恵, 長野 広通, 金 東燮, 吉 ...
    2022 年 34 巻 1 号 p. 76-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

     目的:間質性肺疾患(interstitial lung disease: ILD)は関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)患者の予後に影響しうる重大な合併症であるが,ILD合併RAに対する治療法は確立していない.本研究の目的は新規治療薬Janus kinase(JAK)阻害薬のILD合併RA患者に対する有効性と安全性を明らかにすることである.

     対象・方法:非介入の後向き観察研究で,JAK阻害薬で治療されたILD合併RA患者26例を対象とした.ILDは胸部CTによって線維化病変とすりガラス病変を各々数値化し,JAK阻害薬開始12か月後の各スコアの変化を比較した.安全性評価項目はILDの急性増悪と入院を要する重症感染症の発生とした.

     結果:JAK阻害薬を12か月以上継続できたのは全26例中17例で,このうち12例で肺病変の評価が行われた.JAK阻害薬開始から12ヶ月後のすりガラス病変スコアは低下したが(p=0.037),線維化病変スコアに変化はなかった(p=0.813).12ヶ月後のDAS28-CRPは低下し(p <0.001),ステロイド量は減少していた(p=0.031).全26例における重症感染症発生は2回(同一例)(6.4/100人・年)であり,既存ILDの急性増悪はなかった.

     結論:本研究は短期間における少数例での検討ではあるが,JAK阻害薬はRA-ILD患者にとって治療選択肢のひとつになる可能性があることを示した.

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