臨床リウマチ
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総説
全身性エリテマトーデス治療におけるヒドロキシクロロキンの最適化と新たな展望
一瀬 邦弘
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2024 年 36 巻 3 号 p. 154-166

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抄録

 全身性エリテマトーデス(SLE)の治療において,ヒドロキシクロロキン(HCQ)はその有効性と安全性から中心的な役割を果たす薬剤である.HCQは,SLE患者の疾患活動性を低下させ,症状の緩和や合併症の予防に寄与することが広く認められている.特に,長期にわたる疾患の安定化と生存率の向上において,重要な役割を担っている.HCQの作用機序としては,抗炎症作用,免疫調節効果,および抗ウイルス作用が挙げられ,これらはSLEの複雑な病態生理に対して包括的に働くことができる.最近の研究では,HCQの抗酸化作用や心血管保護効果についても明らかにされており,これにより,SLE患者における心血管イベントのリスクを低減できる可能性が示されている.

 さらに,HCQの使用に伴う網膜毒性リスクについても多くの研究が行われており,視覚障害を予防するためには,適切な用量設定と定期的な眼科検査が重要である.特に,低用量(5mg/kg/日以下)のHCQは,視覚に対するリスクを最小限に抑える一方で,治療効果を確保するために患者のリスクプロファイルに応じた投与量の調整が求められる.アジア人を含む特定の患者集団では,体重や腎機能に基づく用量調整が特に重要である.

 HCQの減量や中止に関するエビデンスも蓄積されつつあり,長期間安定していた患者における中止後の再燃リスクについても考慮する必要がある.最近の研究結果は,妊娠中の使用における安全性や,新たな投与形態による服薬アドヒアランスの向上についても支持している.本総説では,HCQの最新の知見を包括的にレビューし,SLE治療における最適な使用方法を検討することで,患者の生活の質向上と長期的な健康管理の向上に寄与することを目的とする.

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© 2024 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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