文化資源学
Online ISSN : 2433-5665
Print ISSN : 1880-7232
研究報告
文化財保護運動と地域開発史の一試論―三千塚古墳群発掘調査を中心に―
土屋 正臣
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2018 年 16 巻 p. 69-80

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抄録

本稿は1960-70年代の市民参加型発掘調査がなぜ衰退し、今日までほとんど継続されなかったのかという点を明らかにしていく。これにより、今日の地域社会と発掘調査、埋蔵文化財行政の在り方の本質的な課題を浮き彫りにすることができると考えた。東松山市を中心とする埼玉県内の文化財保護をめぐる議論を事例として、この問題を検証した。その結果、保存運動は開発者による「上から」の圧力だけでなく、物質的豊かさを求める人々の「下から」の要求に沿わざるを得なかったことから、変質していったことを明らかにした。その変質とは、保存運動が単に遺跡の保存だけでなく、都市整備総体の中に遺跡を活かす試みを行っていたことにあった。このことから、本事例がまちづくり総体として遺跡を活かす議論を展開する上で重要な示唆を持つものと結論付けた。

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© 2018 文化資源学会
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