文化資源学
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研究報告
波多野精一の著作における個人蔵書からの引用状況
栁澤 健太郎
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2024 年 22 巻 p. 25-38

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抄録

宗教哲学者として知られる波多野精一(1877-1950)の著作にある引用注・文献表において、個人蔵書からの引用・参照の占有率を調査し、波多野にとっての個人蔵書の重要性を明らかにした。具体的には、『波多野精一全集』新版における引用注・参考文献表を網羅的に確認し、東京神学大学図書館・玉川大学図書館で所蔵する各波多野文庫の目録と照合して、個人蔵書からの引用・参照の割合と、その傾向とを確認した。

照合にあたっては、引用注・文献表に記載された書誌情報が波多野文庫その他の目録の記載と一致または類似するかを確認し、その件数と割合を調査した。その結果、波多野の全著作での引用注・文献表に記載された資料のうち8割弱が両波多野文庫からの引用・参照で占められることが確認できた。また、玉川大学波多野文庫と東京神学大学波多野文庫は、書誌データ総数の比は概ね1:3であるものの、引用・参照された資料の書誌データ数では、玉川大のものを最少に想定しても2:3、最多に想定すれば1:1の比であった。なお、著作全体での引用・参照のうち、所属した大学図書館の所蔵資料の占める率は2割弱であり、東京帝国大学在学中の著書・論文における東京帝大附属図書館からの引用・参照も2割弱、主著3部作全体における京都帝大附属図書館からの引用・参照も2割弱であった。

以上のとおり、波多野の引用注・文献表において個人蔵書、特に玉川大学波多野文庫からの引用の占有率が高いことから、波多野の執筆活動における個人蔵書の重要性、特に玉川大学波多野文庫の重要性が確認された。

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