コンクリート中鋼材に対する電気防食は,鋼材電位を卑側に分極させることによる腐食電流の低減のほか,鋼材表面近傍のOH-イオンの生成によるpH上昇と塩化物イオン濃度の減少などの副次的効果を発揮する防食法である。しかし,コンクリート中の鋼材への電気防食の適用の歴史は浅く,防食効果の正確な評価法も確立されているとは言い難い。そこで本研究では,塩化物イオン濃度が異なるコンクリート試験体中の鋼材に対して25mV,50mV,100mVの復極量を維持するように電流値を設定した電気防食を行い,鋼材の腐食速度をもとに防食効果を検討した。その結果,いずれの復極量においても通電時の鋼材の腐食速度は不動態状態である1.0mA/m2程度にまで低下したことから,電気防食基準である100mVを下回る復極量を設定して通電しても腐食速度は低減することを確認できた。