抄録
【背景と目的】周術期患者における手術侵襲が身体機能に与える影響は大きい.その中でも術後身体機能に関する報告は散見されるが,術前身体機能に着目した報告は少ない.そこで,術前身体機能と術後経過の関係について明らかにすることとした.
【方法】対象は腹部外科手術患者56例とし,術後3日目の棟内歩行自立の可否で通常群,遅延群に分類し,術前身体機能(握力,等尺性膝伸展筋力,片脚立位時間,6分間歩行距離),術後1週時,退院時の術前移動能力への回復率と入院期間について比較した.
【結果】術前身体機能は通常群,遅延群の順に等尺性膝伸展筋力(0.52,0.43 kgf/kg),片脚立位時間(37.1,3.8秒),6分間歩行距離(422.6,290.0 m)で有意差を認めた(p<0.05).また,遅延群は術後1週時の回復率が有意に低く,入院期間も長期化する結果を認めた.
【結語】術前身体機能は術後移動能力の回復と関係し,術後経過に影響を及ぼす可能性が示された.