抄録
作物個体群の純エネルギー固定量を増加させるためには, 暗呼吸による消費を考慮に入れる必要がある.田中と山口(1968)は生長効率(GE)の概念を導入し, 総光合成量に占める乾物増加量の割合で示されるGEは水稲個体群において生育後期に著しく低下することを認めた.この結果は出穂期以降, 維持的な呼吸量が増大することを示唆している.水稲個体群のGEを測定した研究は数多く認められるが, 品種間差や器官による相違を充分に検討した例は少ない.そこで本研究では, 圃場栽培した日本晴と多収性品種のタカナリを用いて, 乾物生産, 暗呼吸速度, GEの生育に伴う推移を比較した.