2015 年 6 巻 3 号 p. 181-188
塩化ナトリウム水溶液を電気分解して得られる次亜塩素酸電解水は殺菌効果がある。塩化ナトリウムと同じハロゲンの塩である臭化ナトリウム水溶液を電気分解して得られる臭素酸電解水にも殺菌効果がある。本研究では、3室型2隔膜式電解槽を用いて臭素酸電解水を生成するための電荷量と生成する臭素酸の濃度の関係を明らかにし、また生成した臭素酸電解水の殺菌効果について検討した。生成した電解水中の臭素酸濃度は、与えられる電荷量に比例して増加していくことが明らかになった。また、中間槽からのナトリウムイオンの陰極槽への輸率が、中間槽からの臭化物イオンの陽極槽への輸率よりも大きく、電荷を運ぶイオン量に差が生じていた。このイオン量の差を補うための陽極槽陰イオン交換膜表面近くで水分子の電気分解反応が生じる作用によって発生した水素イオンが中間槽へ移動することで、中間槽の臭化ナトリウム水溶液のpHは酸性を示した。大腸菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌を対象にして基質濃度を同じにした次亜塩素酸電解水と臭素酸電解水の殺菌評価試験を行った。その結果、次亜塩素酸よりも基質濃度を低く調製した臭素酸電解水で十分な殺菌効果が認められた。また、長期保管して基質濃度が著しく低下した臭素酸電解水でも十分な殺菌効果が認められた。これは、長期保管した電解水中の水素イオン濃度が電解水生成直後と変わらないレベルで高いことが、十分な殺菌効果を示した要因であると考えられる。