19 世紀初頭に編纂されたグリム兄弟 Brüder Grimm の『ドイツ伝説集』Deutsche Sagenには、「子ども」のモティーフと、それに関連する不思議な出来事、怪異に関する伝承が収録されている。伝説集の舞台は、現代よりも、子どもの死がより身近であった近代以前の時代であり、モティーフとしての「子ども」は異界に接触しやすい存在として描かれている。伝説は、民間伝承においてメルヒェンや神話よりも「事実性」が示される文学ジャンルであるが、「子ども」の身の上に起こった奇怪な出来事や、「子ども」が遭遇した怪異が数多くのこされている。
本論文では、『ドイツ伝説集』の「子ども」のモティーフが登場する伝説を話型から分類し、そのモティーフの特性ごとに整理する。そして、「子ども」のモティーフが伝説の話型で担っている役割と「子ども」をめぐる怪異について考察する。