1928 年、ヴィーンの作曲家フランツ・シューベルト(1797~1828)は没後100 年を迎え、ヴィーンではこの作曲家を称える3つの音楽祭が開催された。すなわち第10 回ドイツ合唱同盟祭 、オーストリア連邦政府とウィーン市が別々に主催するシューベルト没後100 年祭である。その一方で、オーストリアのラジオ放送局であるRAVAG は、これらの音楽祭のコンサートも含めて、独自にシューベルトに関連する番組を放送していた。
本論文の目的は、RAVAG の機関誌『ラジオ・ヴィーンRadio Wien』に掲載された番組表に基づいて、シューベルト関連の番組の意義を考察することである。その結果、RAVAG では、シューベルトの歌曲にとどまらず幅広いジャンルを放送するだけではなく、伝記についての講演も放送し、シューベルトの創作全体を伝えようとしたことが明らかになった。そうした枠組みのなかに3つの音楽祭も組み込まれ、RAVAG の放送によってシューベルトはヨーロッパ各国の調和の象徴としての役割を担うことになったのである。
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