大阪音楽大学研究紀要
Online ISSN : 2433-4707
Print ISSN : 0286-2670
19 世紀のゲネラルバス概念:演奏実践の理論
三島 郁
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 62 巻 p. 42-57

詳細
抄録

「ゲネラルバスGeneralbass」は通常、16 世紀末から18 世紀後半までのドイツ語圏の西 洋芸術音楽において、実践的伴奏に必要な数字付きバスの記号やそれを使用した演奏を指 す、とされることが多い。しかし用語としてのゲネラルバスは19 世紀から20 世紀初頭に かけて長期間存在し続けたことで、その内容や使用法においては変化もあったはずである。 これについては最近までさほど議論されないままであり、19 世紀の和声とゲネラルバスは ほぼ同義として捉えられる場合もあった。たしかにこの時期に多く出版されたゲネラルバ ス教本の内容は多岐に渡っており、ゲネラルバスを定義するのは簡単ではない。しかし19 世紀のゲネラルバスは生きた音楽理論として実際に活用され続けており、現在研究が盛ん になりつつあるパルティメントの側面からも、無視できない重要な意義を持つと言える。
 本稿では19 世紀のゲネラルバスの概念と意義を、当時の音楽院の理論科目のあり方やゲ ネラルバス理論実践書の内容からその考えかた、目的、そして内容を整理し、明らかにした。 それは18 世紀からの鍵盤上の伝統を受け継ぎながら、和声理論的な側面を充実させ、最終 的には即興的な演奏を行うための理論的枠組みであった。

著者関連情報
© 2024 学校法⼈ 大阪音楽大学
前の記事 次の記事
feedback
Top