抄録
Degradable starch microspheres(DSM)は,肝動脈から投与した場合,約1時間血流を停滞させる.この間,DSMと一緒に投与された薬剤の腫瘍への集積は,たんなる動注の場合よりも増大し,さらに周囲正常肝組織への集積の数倍になる.これらの特性から,転移性肝がんに対して有効性が確認され,現在DSMは転移性肝がん治療に保険適応となっている.筆者らの検討では肝細胞がん,特に血管浸潤などを伴う進行肝細胞がんに対しても有効であることがわかった.塞栓効果が一過性であることから,治療後の肝機能障害は軽度であり,肝機能障害の強い肝悪性腫瘍の治療に,これまでの動脈化学塞栓療法より安心して施行することが出来る.