水溶性抗がん剤に標的指向性と徐放性を付与する目的で,生分解性ポリマーを担体として剤形変更を試みている.
今回は,脱アセチル化キチン(DAC)を担体としてシスプラチン(CDDP),フルオロウラシル(5-FU)の各水溶液をそれぞれ担持させて,新剤形,DAC/CDDP,DAC/5-FUを試作した.標的指向性はヒト大腸粘膜との間に生じる接着力を
ex vivoで測定して評価,薬物放出動態は
in vitroで検討した.新剤形はいずれも粘弾性を持つ半流動体に仕上げた.DAC/CDDPの接着力はDAC/5-FUのそれより高値を示した.CDDPの放出動態は徐放性を示唆したが,DACの調製方法により放出速度に相異がみられた.5-FUを配合した剤形は初期放出が著しく,当初期待していた徐放性を示さなかった.
今般デザインしたDAC/CDDPは,局所停留能とCDDP徐放性を備えた剤形であることが示唆された.
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