抄録
ドキシル(ドキソルビシン内包PEGリポソーム)は,ドキソルビシン塩酸塩をポリエチレングリコール(PEG)化リポソームに封入した製剤である.PEG化することによりマクロファージに捕捉・貪食されることなく,標的組織へ有効成分を運搬することが可能となった.これによって,リポソームが腫瘍組織に集積し,有効成分であるドキソルビシンを徐々に放出することによりドキソルビシンの腫瘍組織内滞留時間を延長し,腫瘍組織内濃度を高め,血漿中の遊離型ドキソルビシンの濃度を抑えることで,骨髄抑制,脱毛,心毒性などの有害反応が軽減されるという特徴を有している.本稿では,ドキシルの卵巣がんに対する臨床効果について述べる.