抄録
近年、活性酸素種(ROS)がさまざまな疾患の原因や重篤化に、大きな影響を与えることがわかってきている。ROSを消去するにはビタミンCやビタミンEなどの天然物や合成抗酸化剤など種々あるものの、多くの臨床結果で「よい」という結果が出たものはない。実は生体内の電子伝達系に代表される反応では、ROSが正常なエネルギーを産生するために必要であり、正常なROSの産生を妨げず、疾病に関与するROSを選択的に消去することが重要なポイントである。非特異的に体内に広がり、正常細胞やミトコンドリア内のレドックス反応を妨害する低分子抗酸化物質は、使用には限界があるのである。我々は、代謝可能な中分子量ポリマーにROS消去能をつくり込み、正常な細胞に入り込むことがなく、疾病に関与するROSを選択的に取り除く、新しいナノメディシンの設計を進めてきた。虚血再灌流障害に対するレドックスナノメディシンの効果を紹介する。