2018 年 33 巻 4 号 p. 303-310
イオン液体とは常温で液体の塩(えん)であり、高い物質溶解性やデザイン性をもつことから、水や有機溶媒に代わる第3の溶媒としてDDSへの利用が注目されている。難溶解性薬物の可溶化はイオン液体のDDS応用において最初に注目された特性であり、薬のイオン液体化による機能改変なども新たな方法論として提唱された。なかでも、経皮デリバリーは最も多くの検討がなされたイオン液体によるDDS利用の領域であり、疎水性イオン液体を中心に種々のイオン液体が経皮吸収促進効果を示すことが報告されている。さらに近年では、生体適合性の担保が重要課題であると認識され、コリンやアミノ酸を中心とした安全性の高いイオン液体を用いたDDSが報告されるようになり、イオン液体を用いたDDSは新しい研究領域として、大きな期待が寄せられている。