2018 年 33 巻 5 号 p. 414-421
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は、若年者に好発し、本邦においてその患者数は増加の一途をたどっている。IBDの治療には異常な免疫の制御を目的に、グルココルチコステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤などが使用されている。その治療効果は確立されているが、全身投与のため長期使用により有害事象が懸念される。また、抗炎症性サイトカインの投与による治療が期待されてきたが、半減期が短く全身投与では必ずしも効果は期待できない。全身への副作用を軽減し、腸管特異的な治療効果が期待できる方法としてDrug delivery system(DDS)がある。現在までは、抗炎症物質を産生するよう遺伝的改変された腸内細菌によるDDSを用いたIBDモデルに対する治療効果のさまざまな報告がなされている。Interleukin(IL)-10を産生する腸内細菌の報告が多いが、近年その他の抗炎症物質での報告も増えている。一方、用いる腸内細菌や抗炎症物質による効果の比較や、安全性の評価、環境への広がりのリスク評価など、今後の検討を積み重ねていく必要がある。