Drug Delivery System
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特集 “中枢神経疾患に対するDDSのトランスレーショナルリサーチ”  編集:近藤昌夫
血中グルコース濃度の変化に応答した効率的な血液脳関門通過型DDS
桑原 宏哉横田 隆徳
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2019 年 34 巻 5 号 p. 352-359

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抄録

筆者らは、脳の主要なエネルギー源であるグルコースの、脳微小血管内皮細胞におけるグルコーストランスポーター1(GLUT1)を介した生理学的な輸送経路を活用して、血液脳関門を効率的に通過するDDSを開発している。過去の研究から、薬物キャリアの表層にグルコースをリガンドとして修飾するのみでは、静脈内投与で脳への十分な送達は実現できないと考えられたことから、筆者らは血中グルコース濃度の制御という独自の生物学的手法を導入した。薬物キャリアとしての特性をもつ高分子ミセル型ナノ粒子の表層に、グルコースを多数修飾し、空腹状態のマウスに静脈内投与した後、血中グルコース濃度の上昇を誘導した。その結果、グルコース修飾ナノ粒子は血液脳関門を通過し、従来の技術と比べて著しく高い効率で脳内に集積し、神経細胞やミクログリアに到達することが明らかとなった。生体側のコンディショニングとしての血中グルコース濃度の変化に応答した筆者らの血液脳関門通過型DDSは、抗体医薬や核酸医薬をはじめとしたさまざまな中~高分子薬剤を脳へと送達するプラットフォーム技術としての発展が期待される。

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© 2019 日本DDS学会
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