抄録
細胞分泌小胞を介した細胞間コミュニケーション、および、小胞を用いた薬物送達が大きく注目されている。細胞分泌小胞は、形成時にサイトゾルに存在する機能性分子、例えばmicroRNA等の遺伝子や酵素を内包する。分泌された小胞は、分泌細胞から離れた場所に存在する細胞に運ばれ、細胞内へ移行する。その結果、分泌小胞内の“メッセージ”が離れた細胞に伝わり、結果として分泌小胞を介して細胞間情報伝達が行われる。一方で、エクソソームをはじめとした細胞分泌小胞は、薬学的な観点から、免疫制御が可能、遺伝子工学で膜タンパク質発現が可能、細胞間コミュニケーション経路が利用可能、低い細胞毒性、無限分泌等の高い優位性を有し、次世代の薬物運搬体としても大きく期待されている。筆者らの研究チームは、エクソソームの細胞内移行に「マクロピノサイトーシス」経路が重要であること、そしてペプチド化学を用いることで、エクソソームの膜表面にマクロピノサイトーシスを誘導するための機能性ペプチドを修飾することで、エクソソームの細胞内送達の効率性を、大幅に上昇させることに成功している。本総説では、エクソソームを中心とした細胞分泌小胞の概要やマクロピノサイトーシスの重要性、機能性ペプチド修飾型エクソソームを基盤とした薬物送達技術等について紹介する。