Drug Delivery System
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35 巻, 1 号
バイオ医薬とDDS
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
年頭にあたって
特集 “バイオ医薬とDDS”  編集:武田真莉子
  • 武田 真莉子
    2020 年 35 巻 1 号 p. 7
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
  • 石井 明子
    2020 年 35 巻 1 号 p. 8
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
  • 民輪 英之, 武田 真莉子
    2020 年 35 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    難吸収性薬物の経粘膜送達を実現するための有用な戦略の1つとして、吸収促進剤の利用があげられる。この戦略に基づいた研究は1980年代から盛んに行われており、現在においてはペプチドやタンパク質といったバイオ薬物を対象として、吸収促進剤を含有する製剤の臨床試験が多数進行している。そのような中、2019年においては、Novo Nordisk A/Sが開発した世界初となる経口GLP-1(glucagon-like peptide-1)アナログ製剤が米国で承認されて話題となった。本製剤には、経口吸収促進剤サルカプロザートナトリウム(SNAC)が含有されている。バイオ医薬品産業がますます拡大すると予測されている今、注射剤以外の製剤オプションを提供できる吸収促進技術の開発に新たな注目が集まっている。そこで本稿では、特に経口バイオアベイラビリティの改善を目指した経粘膜吸収促進剤に焦点をあてて、現在の開発状況と安全性に関する最新の知見、そして今後の展望について紹介する。
  • 橘 敬祐, 近藤 昌夫
    2020 年 35 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    イツの哲学者ヘーゲルは、事物の螺旋的発展の法則を提唱している。これは、事物の発展はあたかも螺旋階段を昇るように進むという法則であり、技術の進歩に伴い、古く懐かしいものが新たな価値等を伴って再び現れてくることを意味している。さて、単細胞生物から多細胞生物への進化の過程において、生物は生体内外を隔てるバリアとして上皮を獲得してきた。上皮は化学物質、細菌、ウイルス等の生体外異物の生体内侵入を防ぐこと等で恒常性維持に深く関わっている。当然のことながら、上皮は薬の吸収障壁となるため、古くから上皮バリア制御は薬物吸収促進の基本戦略となっている。実際、すでに半世紀以上前には、キレート剤によるヘパリンの粘膜吸収促進の報告がなされ、上皮バリア制御による吸収促進のコンセプトは提起されていた。1982年になると上皮バリアの脂質ミセル説が提唱され、中鎖脂肪酸等を用いた吸収促進技術の開発につながっている。その後、1993年のオクルディンの発見に端を発した上皮バリアの生物学の急速な進展に伴い上皮バリアの分子基盤が詳らかにされ、今まさに吸収促進技術が螺旋的発展を遂げつつある。本稿では、上皮バリアの生物学の発展に伴う吸収促進技術の螺旋的発展を概説し、バイオ医薬のDDS技術としての現状と課題を議論したい。
  • 位髙 啓史
    2020 年 35 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    mRNA医薬は、合成されたメッセンジャーRNA(mRNA)を体内に直接投与して、mRNAによってコードされたタンパク質を標的細胞で産生させることによって、治療または予防を行う医薬品である。mRNAは細胞外環境で極めて不安定な物質であり、これを医薬品として有効に用いるためには、DDSの果たす役割は大きい。世界的には脂質ナノ粒子(LNP)が最も多く用いられるが、肝標的投与以外の目的に対しては、まだ多くの課題が残る。筆者らが開発を進めるナノミセル型キャリアは、局所での組織浸透性・安全性に優れ、細胞機能制御を目的とするmRNA医薬投与に優れた性質をもつ。本稿では、このナノミセル型キャリアの概略、および最近の治療応用研究を紹介する。
  • 吉岡 祐亮, 落谷 孝広
    2020 年 35 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    現在、核酸医薬品や抗体医薬品などの分子標的医薬品の開発が盛んに行われており、その治療効果が期待されている。実際、マウスを用いた治療効果の測定では一定の評価が得られているが、それら評価は腫瘍局所に投与したりして評価している場合もあり、局所投与に限定されるのが現状である。しかし、ヒトの治療を想定したときに、局所投与可能な場合はほとんどなく、開発した医薬品を患部局所に効率的に送達するデリバリーシステムの開発が必要である。エクソソームは細胞が分泌するナノスケールの小胞であり、生体における天然の分子デリバリーシステムを担っている。このエクソソームの特徴に注目した新たなデリバリーシステムの開発が世界中で行われており、治療応用を示した実例も報告されている。しかし、技術的な問題点なども多く残っており、実用化に向けた研究段階である。本稿では、エクソソームを用いたドラッグデリバリーシステムの可能性、その利点や問題点などを述べる。
  • 中瀬 生彦
    2020 年 35 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    細胞分泌小胞を介した細胞間コミュニケーション、および、小胞を用いた薬物送達が大きく注目されている。細胞分泌小胞は、形成時にサイトゾルに存在する機能性分子、例えばmicroRNA等の遺伝子や酵素を内包する。分泌された小胞は、分泌細胞から離れた場所に存在する細胞に運ばれ、細胞内へ移行する。その結果、分泌小胞内の“メッセージ”が離れた細胞に伝わり、結果として分泌小胞を介して細胞間情報伝達が行われる。一方で、エクソソームをはじめとした細胞分泌小胞は、薬学的な観点から、免疫制御が可能、遺伝子工学で膜タンパク質発現が可能、細胞間コミュニケーション経路が利用可能、低い細胞毒性、無限分泌等の高い優位性を有し、次世代の薬物運搬体としても大きく期待されている。筆者らの研究チームは、エクソソームの細胞内移行に「マクロピノサイトーシス」経路が重要であること、そしてペプチド化学を用いることで、エクソソームの膜表面にマクロピノサイトーシスを誘導するための機能性ペプチドを修飾することで、エクソソームの細胞内送達の効率性を、大幅に上昇させることに成功している。本総説では、エクソソームを中心とした細胞分泌小胞の概要やマクロピノサイトーシスの重要性、機能性ペプチド修飾型エクソソームを基盤とした薬物送達技術等について紹介する。
  • 曽宮 正晴, 黒田 俊一
    2020 年 35 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    DDSナノキャリアは、治療用薬剤の体内における時空間的制御を行うために使用される。具体的には、①治療用薬剤を包含し、②免疫系による捕捉から逃れ、③患部(臓器・細胞)に到達し、④細胞内・外の標的部位に治療用薬剤を適切な量とタイミングで送達するなどの多段階の機能が求められる。これまで開発されてきたDDSナノキャリアは、化成品と生物製剤に大別されるが、前者には上記すべての機能を有するものは存在しない。一方、上記すべての機能を有する後者のモデルとしてウイルスがある。本稿では、ヒト肝臓に特異的に感染するB型肝炎ウイルスの初期感染機構を模倣したDDSナノキャリア「バイオナノカプセル」について概説する。
  • 原田 直純, 村岡 大輔, 珠玖 洋, 秋吉 一成
    2020 年 35 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    がん治療用ワクチンでは、主要なリンパ器官(リンパ節や脾臓など)に局在する抗原提示細胞(樹状細胞やマクロファージ)にワクチン抗原を高効率かつ適切なタイミングで送達することが、ワクチンによる免疫応答誘導に極めて重要である。筆者らは、コレステロール置換プルラン(CHP)ナノゲルを抗原デリバリーシステムとしたがん治療ワクチンの有用性を示してきた。また、CHPナノゲルを利用した腫瘍内マクロファージの機能調節技術を開発し、腫瘍微小環境を制御することで、免疫チェックポイント阻害抵抗性がんに対するがん免疫療法の効果を顕著に増強し得ることを見出した。
[連載] DDS製品開発の最前線
  • 藤原 悠起, 朴 知賢, 堂地 赳生, 弦巻 好恵
    2020 年 35 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー
    2019年3月、日本で初めて免疫細胞療法であるキメラ抗原受容体T細胞療法(chimeric antigen receptor-T cell therapy:CAR-T細胞療法)、チサゲンレクルユーセル(製品名;キムリア®点滴静注、ノバルティス)が承認された。チサゲンレクルユーセルの適応は、再発または難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukemia:B-ALL)および、再発または難治性のCD19陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)である。チサゲンレクルユーセルは、患者自身のT細胞を原材料とする再生医療等製品であり、白血球アフェレーシスにより採取したT細胞にレンチウイルスベクターを用いてキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)遺伝子を導入して製造される。今回の承認は、再発または難治性のCD19陽性のB-ALLとDLBCLを対象とした国際多施設共同第II相試験(ELIANA試験、JULIET試験)の結果に基づいている。このCAR-T細胞療法は、高度な細胞製造技術はもちろん、複雑な製造工程を厳格に管理する体制が求められている。
[連載]DDSの「ちょっとした」技術・知識
若手研究者のひろば
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