抄録
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、低侵襲がん療法の1つとして注目されている。BNCTは、低エネルギー熱中性子(0.025eV)とホウ素10(10B)の間の核反応を利用するものであり、生成したα粒子とリチウム核は、細胞を殺すのに十分強力なエネルギー(2.4MeV)をもつ。したがって、いかにして10Bを腫瘍へ選択的に送り込むかが、治療の鍵となる。Mercaptoundecahydrododecaborate(Na2[B12H11SH])およびp-boronophenylalanine(BPA)は、長年にわたってBNCTで用いられてきた。特に、BPAは、悪性黒色腫だけでなく、脳腫瘍や頭頸部がんの治療にも広く用いられている。世界に先駆け、BNCT用小型加速器の開発に成功したわが国では、脳腫瘍および頭頸部がん患者に対するBPA―BNCTの第II相臨床試験が完了し、医療承認を申請中である。その一方で、BPAで治療できないがんに対する新しいホウ素薬剤の開発が喫緊の課題となっている。本稿では、BNCTの最近の進展とDDS技術を駆使した新しいホウ素薬剤の開発について紹介する。