抄録
α線はβ線に比べ狭い範囲に高いエネルギーを付与することができるため、細胞殺傷力が高い。そのα線を放出する核種で抗体を標識した治療法をα線放射免疫療法(α―RIT)と呼ぶ。α―RITの高いポテンシャルは認識されていたものの、これまで実施された臨床試験は血液腫瘍では多いが、固形がんでは多くはなかった。しかし、2017年から、固形がんを対象にしたα―RITの主役を担っていくと考えられる225Acと227Thを使用した臨床試験が相次いで開始されるなど、α―RITの開発研究が精力的に進められるようになってきている。本稿では、放射免疫療法の基礎、α―RITの現状および課題を紹介する。