抄録
抗体薬物複合体は、選択的かつ効果的にがん細胞を死滅させるとともに、全身毒性の軽減が期待される医薬品である。第一三共では独自技術の研究を進め、カンプトテシン誘導体を活性本体とする薬物リンカー技術を確立し、抗HER2抗体に本技術を適用したトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、本剤)の研究開発を進めた。本剤は、複雑な構成成分に関する難易度の高い品質管理を行い、処方・剤形・容器・包装を選定することで安定した供給に努めている。間質性肺疾患などの重大な副作用を注意深くモニタリングする必要があるものの、新たな治療選択肢としてHER2を発現する乳がん、胃がんに対し承認を取得した。