抄録
認知症の根本治療薬開発を成功させるためには、その病態の正確な理解と治療標的の設定が重要である。原因物質を除去する抗体薬や障害部位を改善しうる栄養因子等、有用な候補薬物が見出された暁には、それらを確実に脳に移行させるための薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)が必須となる。本稿では、筆者らが近年開発してきた細胞膜透過ペプチド(Cell-penetrating peptides:CPPs)を併用した経鼻投与戦略(Nose-to-Brain送達法)の有用性を示した検討例を紹介し、認知症治療薬開発に向けた応用性について議論する。また、CPP併用投与時の鼻腔から脳実質への薬物移行経路についても紹介する。