Drug Delivery System
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38 巻, 2 号
日本DDS学会
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
FOREWORD
OPINION
特集 “革新的脳内DDS の開発に向けて”  編集:安楽泰孝
  • 水野 ローレンス 隼斗, 安楽 泰孝
    2023 年 38 巻 2 号 p. 100-108
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    溶液中において機能性高分子の自己組織化を利用しナノ構造体を形成させることができるが、昨今、隆盛を極めるボトムアップテクノロジーとの関連から、医療を中心とする幅広い分野でその応用が検討されている。これらの研究の目標の一つに、生理活性物質を生体内の標的とする箇所へ送り届け、狙った機能を発揮することで活躍する薬剤送達システムの創製がある。本稿では、既存技術では通過が困難な血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)を効率的に通過し、種々の医薬品(特に抗体医薬)を脳内へ送達するナノマシン開発と、それに基づくアルツハイマー病に代表される脳神経系疾患の革新的治療技術について紹介する。
  • 亀井 敬泰
    2023 年 38 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    認知症の根本治療薬開発を成功させるためには、その病態の正確な理解と治療標的の設定が重要である。原因物質を除去する抗体薬や障害部位を改善しうる栄養因子等、有用な候補薬物が見出された暁には、それらを確実に脳に移行させるための薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)が必須となる。本稿では、筆者らが近年開発してきた細胞膜透過ペプチド(Cell-penetrating peptides:CPPs)を併用した経鼻投与戦略(Nose-to-Brain送達法)の有用性を示した検討例を紹介し、認知症治療薬開発に向けた応用性について議論する。また、CPP併用投与時の鼻腔から脳実質への薬物移行経路についても紹介する。
  • 黒澤 俊樹, 佐孝 大樹, 久保 義行, 出口 芳春
    2023 年 38 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    血液脳関門(Blood-Brain Barrier:BBB)は、脳毛細血管内皮細胞同士が密着結合を形成することで、脳と血液間における物質輸送を厳密に制御している。脳内へのドラッグデリバリー技術、そして有効な中枢疾患治療薬の開発にとって、ヒト脳への移行性を評価できるin vitroモデルの構築が重要であるが、既存の動物および細胞評価系は種差や密着結合形成能の問題が指摘されている。近年、ヒトiPS細胞から脳毛細血管内皮細胞へ分化誘導する技術が開発され、強力な密着結合性を有するヒトBBBモデルとして期待されている。このヒトBBBモデルを創薬や疾患研究に応用するためには、密着結合のみならず、BBBにおける多様な機能性タンパク質の評価も重要である。本稿では、ヒトiPS細胞由来BBBモデルにおけるトランスポーター機能について、筆者らの研究成果を中心に紹介する。併せて、これまでに報告されている分化誘導方法や疾患研究への応用など、ヒトiPS細胞由来BBBモデルの有用性について概説する。
  • 内田 智士
    2023 年 38 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    中枢神経系難治疾患は、mRNA医薬の有力な標的であるが、デリバリーが課題である。送達経路として、脳実質や脳脊髄液への局所投与、全身投与からの血液脳関門(BBB)を介した送達、nose-to-brain経路があげられる。高分子ミセルは、中枢神経系への局所投与において、炎症反応を伴うことなく効率的なタンパク質発現を誘導し、モデル動物に対して治療効果を示した。例えば、アミロイドβに対する抗体断片のmRNAのマウス脳室内投与により、脳内アミロイドβ量が減少した。CRISPR/Cas9系のCas9タンパク質およびガイドRNAをマウス脳実質内に投与することで、in vivoゲノム編集に成功した。一方で、より低侵襲かつ簡便な投与を目指し、BBB経由やnose-to-brain経路によるmRNA送達システムも開発されている。
  • 山下 親正
    2023 年 38 巻 2 号 p. 134-145
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    神経変性疾患の多くは、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患である。その中で、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺や前頭側頭葉変性症などのタウオパチーは、タウ蛋白が異常なリン化により細胞内にタウ凝集体として蓄積し、さらにこの凝集体が神経細胞を伝播して、その結果、神経変性が生じる。仮に神経細胞内でタウ凝集体の蓄積を抑制する薬物が見出されたとしても、その薬物を効率よく神経細胞内に送達でき、しかも神経細胞を乗り継いで移行できるDDS技術が開発されなければ、神経変性疾患の進行を阻止し、根本的に治療する有効な治療薬を開発することは難しい。そこで本稿では、筆者が、神経変性疾患に適用可能で、神経ペプチドを神経細胞内の軸索を介して神経細胞を乗り継いで側脳室内投与よりも効率よく作用部位へ送達させ、中枢作用を示すことのできるNose-to-Brainシステムを開発したので、紹介する。
  • 葛生 泰己, 橘 敬祐, 近藤 昌夫
    2023 年 38 巻 2 号 p. 146-154
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    中枢神経系に薬物を送達する際、血液脳関門(BBB)が大きな障壁となる。BBBでは、隣接する脳微小血管内皮細胞の隙間を封印する必要があり、この封印するための仕組みとしてタイトジャンクション(TJ)が発達している。TJは複数のタンパク質から構成されているが、なかでもクローディン-5(CLDN-5)は、BBBのTJシール機能に中心的な役割を担っている。ノックアウトマウスでは、約800Daの分子が細胞間隙を介して脳内に移行していたことから、BBBのTJシール制御による脳内薬物送達技術として、CLDN-5バインダーの開発が行われてきた。本稿では、このCLDN-5を標的としたBBB制御技術の臨床応用に向けた有効性および安全性に係る論点を議論したい。
  • 小俣 大樹, 宗像 理紗, 丸山 一雄, 鈴木 亮
    2023 年 38 巻 2 号 p. 155-163
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    近年、超音波と超音波造影剤であるマイクロバブル(気体を脂質などで覆い安定化した微小気泡)を組み合わせた血液脳関門の透過性亢進技術が注目されている。超音波照射により、マイクロバブルの振動などが誘導され、その際に生じる機械的作用が血液脳関門に影響を与え、透過性が亢進されると考えられている。超音波照射条件やマイクロバブルの投与量などを適切に設定することで、低侵襲的な脳への薬物送達が可能であることが報告されている。本稿では、超音波とマイクロバブルを用いた脳標的薬物送達における筆者らの研究を紹介するとともに、血液脳関門の透過性亢進に影響を与えるマイクロバブル特性や臨床研究などのこれまでの研究動向を概説し、今後の展望を述べる。
DDS製品開発の最前線
  • 河田 忠之
    2023 年 38 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    ルタテラ静注は、ソマトスタチン受容体(SSTR)陽性の神経内分泌腫瘍(NET)の治療における国内初となるペプチド受容体放射性核種療法の放射性医薬品である。本剤は放射性ルテチウム177(177Lu)で標識されたソマトスタチンアナログであり、静脈から投与後、ソマトスタチン受容体に結合し、腫瘍細胞内に取り込まれ、177Luから放出されるベータ線がDNA損傷を惹起し、細胞増殖抑制作用を発揮する。海外第Ⅲ相試験NETTER-1では、SSTR陽性の切除不能または遠隔転移を有する中腸NET患者を対象として、有効性および安全性が確認され、2017年9月に欧州31カ国において承認を取得し、その後、米国、カナダ、韓国、台湾等で承認を受けた。日本では、SSTR陽性の切除不能または遠隔転移を有する膵、消化管または肺NET患者を対象とした国内第Ⅰ/Ⅱ相試験にて有効性および安全性が確認され、2021年6月に承認を取得した。
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