抄録
火災事故における死因の約4割がガス中毒である。原因物質は、木材などの不完全燃焼により生成する一酸化炭素(CO)と、アクリルやウレタンなどの家財燃焼により発生するシアン化水素(HCN)である。これらのガス中毒に対して臨床使用できる治療薬は存在せず、毎年多くの犠牲を出している。筆者らは化学系の研究室において独自に生み出した人工ヘモグロビン化合物hemoCDを用いて、動物体内でCOやHCNなどのガス成分を特異的に吸着して尿として排泄させる系を見出した。本稿では1度の投与でCOとHCNの同時解毒が可能となる新規創薬シーズhemoCD-Twinsについて解説する。