Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
Print ISSN : 0913-5006
ISSN-L : 0913-5006
38 巻, 4 号
日本DDS学会
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
FOREWORD
OPINION
特集 “糖鎖とDDS”  編集:眞鍋史乃
  • 稲垣 豊, 松木 勇樹, 柳川 享世, 後藤 光昭, 赤池 敏宏
    2023 年 38 巻 4 号 p. 270-276
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー
    エクソソームは、体液中を循環することで遠く離れた細胞に情報を伝達する天然のキャリアとして注目されているが、そのDDSキャリアとしての利用には解決すべき課題も多い。なかでも、標的細胞への選択的送達はエクソソームを利用した医薬品開発において特に重要である。筆者らはこの細胞選択性を規定するうえで、糖鎖の重要性に着目した。エクソソームの表面に存在するシアル酸を標的細胞への指向性を有する他の糖鎖で置き換えることで、エクソソームの選択的な認識と取り込みの増加が期待できる。実際に、ラクトース糖鎖によるエクソソームの修飾が、アシアロ糖タンパク質受容体を介して肝実質細胞への選択的な送達を促すことを見出した。
  • 東 大志
    2023 年 38 巻 4 号 p. 277-286
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー
    近年、創薬モダリティが、天然物や低分子化合物から、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸、ゲノム編集分子まで拡大しており、高度で多様な製剤・DDS技術が必要とされている。とりわけ、バイオ医薬品の進化や開発スピードは目まぐるしく、製剤・DDS技術に求められる条件も非常に難易度が高い。各モダリティごとに最適な製剤素材やDDSキャリアを設計していては、医薬品開発の停滞につながってしまうため、多様なモダリティに適用可能なユニバーサルキャリアの開発が求められている。本稿では、すべてのバイオ医薬品に適用できる製剤素材・DDSキャリアの開発を究極の目標に掲げて、筆者らが最近構築した超分子キャリア「変幻自在ポリマー」について紹介する。
  • 北岸 宏亮
    2023 年 38 巻 4 号 p. 287-296
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー
    火災事故における死因の約4割がガス中毒である。原因物質は、木材などの不完全燃焼により生成する一酸化炭素(CO)と、アクリルやウレタンなどの家財燃焼により発生するシアン化水素(HCN)である。これらのガス中毒に対して臨床使用できる治療薬は存在せず、毎年多くの犠牲を出している。筆者らは化学系の研究室において独自に生み出した人工ヘモグロビン化合物hemoCDを用いて、動物体内でCOやHCNなどのガス成分を特異的に吸着して尿として排泄させる系を見出した。本稿では1度の投与でCOとHCNの同時解毒が可能となる新規創薬シーズhemoCD-Twinsについて解説する。
  • 米澤 淳
    2023 年 38 巻 4 号 p. 297-304
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー
    抗体医薬品は医療において極めて重要な役割を果たしている。Fc領域の297番目のアスパラギン残基にはN-結合型糖鎖が結合しており、薬力学および薬物動態において重要な役割を果たす。特に、末端ガラクトース、シアル酸、フコースなどは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、肝取り込みに影響することが知られている。すなわち、糖鎖が抗体医薬品を運んでいる。他方、抗体医薬品の測定は主に酵素結合免疫吸着検査法(ELISA法)が用いられており、糖鎖の変化などは区別できない。しかし、抗体医薬品も生体内での構造変化(バイオトランスフォーメーション)が起こることが明らかにされつつある。そこで、質量分析技術を用いた新たな分析手法が注目されている。本稿では、抗体医薬品における糖鎖の役割に加えて、筆者らの研究成果を紹介する。
  • 安藤 弘宗
    2023 年 38 巻 4 号 p. 305-312
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー
    糖鎖はすべての細胞表面に存在し、外界とのコミュニケーションの仲立ちをしている。糖鎖-タンパク質相互作用はその中心となる相互作用であり、多様な組み合わせの糖鎖-タンパク質相互作用が見出されている。この相互作用を薬物送達システムに応用する試みは、約40年の月日を経ても活発に行われている。本稿では、これまでの研究の歴史を辿りながら、これまでの研究を細胞・組織の糖鎖を標的とする研究と糖結合性タンパク質(レクチン)を標的にする研究の2つに整理して、研究動向を概説する。
  • 上原 啓嗣
    2023 年 38 巻 4 号 p. 313-320
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー
    アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)やSmall interfering RNA(siRNA)に代表される核酸医薬は、従来の創薬モダリティとは異なる創薬標的へのアプローチが可能である。近年、肝臓表面上のアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を利用した、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)リガンドコンジュゲート核酸は、肝臓ターゲティングとしての核酸医薬として、臨床でバリデートされ、複数の薬剤が上市されてきている。この成功例から、さらなる展開として、肝臓以外をターゲットとするリガンドコンジュゲート核酸の技術が期待されているが、未だチャレンジングな課題となっている。筆者らは、糖鎖受容体とそのリガンドのユニークな結合、内在化特性に着目し、糖鎖リガンドコンジュゲートsiRNAの技術開発を検討してきた。本稿ではその事例について紹介する。
DDS製品開発の最前線
  • 渡辺 直樹
    2023 年 38 巻 4 号 p. 322-328
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー
    ビルテプソ(一般名:ビルトラルセン、viltolarsen、開発記号:NS-065/NCNP-01)は、日本新薬株式会社と国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の共同研究により創製された、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬である。ビルトラルセンは、モルフォリノ核酸(PMO)を用いたアンチセンス核酸医薬品であり、ジストロフィン遺伝子のエクソン53を対象としたエクソン・スキッピング法を作用機序として、患者で欠損しているジストロフィン・タンパク質発現の回復を図る薬剤である。2020年3月に国内製造販売承認を取得し、2020年8月に米国FDAより販売承認を取得した。
DDSの「ちょっとした」技術・知識
若手研究者のひろば
学会印象記
feedback
Top