抄録
細胞内の動的な空間的秩序を制御する物理的機構として、近年の細胞生物学研究で注目を集めているのが相転移・相分離現象である。タンパク質や核酸の相転移・相分離を介して形成される細胞内構造体である非膜型オルガネラは、転写・翻訳などの生理的現象から疾患の発症に至るまで幅広い生物現象に関与し、新たな非膜型オルガネラの報告も相次いでいる。このため非膜型オルガネラを標的にした操作技術の開発は、細胞機能の操作を実現するうえで重要なオプションとなりつつある。本稿では、筆者が合成生物学分野のツールに基づいて開発した非膜型オルガネラの集合・離散を操作する技術について解説し、現状の技術的課題と将来展望について議論する。