日本皮膚科学会雑誌
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乳頭腫ウイルス(抗原)陽性の足底表皮嚢腫―足底疣贅の冷凍凝固療法の経過中に出現した1例の報告と文献例の集計検討―
稲葉 葉一江川 清文武藤 公一郎荒屋 襲喜
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1990 年 100 巻 2 号 p. 199-

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抄録

最近,足底表皮嚢腫とヒト乳頭腫ウイルスとの関係が注目されている.著者等は最近,疣贅治療中の足底に生じた足底表皮嚢腫に,乳頭腫ウイルス(PV)抗原を検出した.足底発症以外のものも含め,PV抗原の検出を始め,HPVとの関連が認められた表皮嚢腫の本邦報告例は,自験1例を加えて現在までに23例を数え,特にPV抗原の検出が可能になってからの症例の集積は急速である.これらに関する臨床的,病理組織学的記載事項を検討すると,これらの表皮嚢腫では嚢腫壁の特異な細胞質内好酸性物質や,嚢腫内腔の角質内空胞様構造の出現が特徴的の様である.HPVの検出は,単なる二次感染の可能性も否定できないが,その高い陽性率,病理組織学的特徴,および発生の初期から観察し得た自験例で足底疣贅が先行したことは,これらの嚢腫の発生にHPVが真接関与する可能性を示唆するものと考える.

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© 1990 日本皮膚科学会
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