日本皮膚科学会雑誌
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Langerhans細胞は紫外線発癌に抑制的に働いているか―OKT6モノクローナル抗体による検討―
神保 徹也市橋 正光藤原 美定
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1990 年 100 巻 8 号 p. 863-

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抄録

表皮に存在するLangerhans細胞(LC)は抗原提示細胞であり,免疫監視機構の初期段階の役割を担っており,紫外線誘発皮膚癌に対し,抑制的に働いていると考えられる.我々は,紫外線高発癌性色素性乾皮症(XP)に注目し,XPの表皮LCに対する紫外線(UVB)照射の影響をOKT6モノクローナル抗体を用いて追求し,UV発癌とLCの関連について考察した.最少紅斑量(MED)および3倍量のMEDを照射した場合,XPと正常人のOKT6陽性LCの分布密度はUVB照射6時間後より減少し始め,3MED照射後,XPでは2日後,正常人では3日後に最少となり,どちらも2週間後には照射前値まで回復した.1MEDでは,どちらも減少度は軽度で,2週間後には照射前値に戻った.また,XPバリアントおよび正常人のいずれにおいても,慢性日光曝露皮膚のLCは被覆部LCに比べ有意に減少していた.とくにXP9KOでは34歳までに5個の基底細胞上皮腫が発生しているが,慢性日光曝露部LC数減少およびUVB照射後のLCの減少と回復動態は正常人と同じパターンであった.従って,本実験からは,LCのUV発癌に対する免疫監視機構への積極的関与を支持する結果は得られなかった.

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© 1990 日本皮膚科学会
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