日本皮膚科学会雑誌
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成人型アトピー性皮膚炎の顔面酒さ様皮膚炎における細菌の関与
野口 俊彦向井 秀樹西岡 清西山 茂夫
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1990 年 100 巻 9 号 p. 929-

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抄録

成人型アトピー性皮膚炎の顔面に好発する酒■様皮膚炎における細菌の関与を検討するため,額,鼻腔および咽頭での細菌叢ならびにそれらの細菌の抗生物質感受性を検討した.酒■様皮膚炎を臨床的に,湿潤性病変を重症,浮腫性紅斑・苔癬化局面を中等症,および潮紅を軽症と大別すると,皮表に存在する細菌数も同様に重症度に比例して増加した.額と鼻腔より検出された菌種は,圧倒的にStaphylococcus群が多く,それぞれの部位から得た菌は抗生物質の感受性試験においても一致していた.一方,咽頭ではStaphylococcus群以外にHaemophilus parainfluenzaeの検出率が高く,額および鼻腔とは異なる細菌叢を示した.抗生物質による臨床効果は,湿潤性病変に対しては全例に有効であったが,浮腫性紅斑においては有効な症例と無効な症例とがみられた.一方,苔癬化局面は全例無効であったが,潮紅局面は僅かに有効な症例もみられた.以上の結果より,本病変における湿潤性病変や浮腫性紅斑において,細菌は少なくとも増悪因子のひとつとして病像に強く関与していることが考えられた.

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© 1990 日本皮膚科学会
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