47歳,女性,左後頭部に丘疹・結節・腫瘤が多発したangiolymphoid hyperplasia with eosinophilia(ALHE)の1例を報告した.組織学的,電顕的,免疫組織化学的検索を行い,いくつかの知見を得た.1)epithelioidと称される特異な内皮細胞を有する血管の増生と,管腔形成の明らかでない未熟な血管増殖を認めた.内皮細胞内にはしばしば空胞を認めた.電顕的には,内皮細胞は細胞内小器官を豊富に有していた.これらの所見から,ALHEでは血管の増殖(新生)機転が活発化していると考えられる.2)病変の深部にarterio-venous(A-V)shuntや,内膜肥厚と内弾性板の断裂を示す動脈病変が認められた.3)浸潤細胞には肥満細胞が混在したが,その分布は好酸球浸潤とは特別な位置関係になく,また,脱顆粒現象もほとんど認められなかった.ALHEでの好酸球浸潤には肥満細胞由来の好酸球遊走因子以外の因子が関与するのではないかと思われる.4)浸潤リンパ球に関しては,T,B両細胞が混在しており,T細胞についてもモノクロナリティーは証明されなかった.ALHEでのリンパ球浸潤は二次的,反応性の変化であると考えられる.なお,自験例では,所属リンパ接腫大,同リンパ節胚中心へのIgEの沈着,血清IgE高値など木村氏病を思わせる所見も見られたが,木村氏病と診断する根拠は認められなかった.ALHEの血管病変および細胞浸潤病変について文献的に考察した結果,A-V shunt,血栓,動脈病変(動脈炎)などが,その特徴ある病変の形成に関与すると考えられた.ALHEと木村氏病との異同に関しては,血管病変の点で明白な相違が認められることから,両者は鑑別すべき疾患であると考えた.
抄録全体を表示