抄録
症例1:20歳,男子,陰嚢の結節.症例2:14歳,女子.鼻翼部の半球状赤褐色小腫瘤.症例3:30歳,男子.前腕の半球状赤褐色小腫瘤.病理組織所見:3例とも胞体が好酸性で,均質,すりガラス状の多核巨細胞が多数浸潤している.PAS反応は巨細胞に一致して陽性で,ジアスターゼで消化されない.酵素抗体法でリゾチームは多核巨細胞に陽性で,S-100蛋白は陰性であった.reticulohistiocytic granuloma(RG)と類似した疾患であるmulticentric reticulohistiocytosis(MR)と成人型xanthogranuloma(AX)との異同を明らかにするために,本邦で報告されたこれらの疾患120例を集め,臨床像,病理組織像の特徴を検討した.MRは多発関節炎の合併例の多いこと,RA因子の陽性例が多いこと,皮疹が全身に多発する点などから系統的な全身的疾患と考えられ,しかも高齢者に発症することなどから,異なる疾患概念と考えられる.次に,RGとAXについては,皮疹の色調や硬さを除き臨床像に類似点が多い.組織学的所見も共に組織球の増殖である.AXには泡沫細胞やTouton型巨細胞が多数出現し,一方のRGでは特異な多核巨細胞が多数出現する点に相違があるが,スペクトルの両極端を見ていると考えれば,RGとAXは共になんらかの外因的な刺激により生じた反応性の肉芽腫性増殖で,両者の間には本質的な違いがないと考えることもできる.