83歳女性.1987年1月,前頭部に結節を有しない斑状の紅色局面が出現した.臨床・組織像より悪性血管内皮細胞腫(malignant hemangioendothelioma,MHE)と確認後,recombinant interleukin-2(rIL-2)を総量9.6×106国内標準単位(JRU)局注した結果,2年9ヵ月に渡って完全寛解を保っていた.今回は本年2月6日になり後頭部に浸潤を触れる紅斑局面が出現し7日間で14.8×11.0cm大の局面にまで急速に拡大した.臨床・組織学的にMHEの再発を確認した後,rIL-2の後頭動脈からの動注を試みたが失敗,両側浅側頭動脈から1日80万JRU,15日間,総量1.2×107JRUの持続動注及び局注(12日間,総量1.9×107JRU)の併用を施行した.持続動注を開始して7日目から浸潤,紅斑ともに消退傾向であったが,組織学的には真皮深層に腫瘍細胞が残存していた.しかし,24日目には紅斑は完全に消失し,組織学的にも腫瘍細胞は全く認められなくなった.副作用は動注開始7日目より熱発,消化器症状,肝障害,末血好酸球増多が認められたが,動注中止により速やかに消退し始め,2週間後には全てが正常範囲に戻った.以後無治療で現在まで8ヵ月間経過観察中であるが局所再発,転移は全く認められていない.本症例におけるrIL-2動注法の特徴は,再発例にもrIL-2単独療法で著効を示したこと,病巣の栄養血管以外の動脈からの注入で著効を示したことである.以上より,本療法はMHEの初発例のみならず再発例にも単独で第一に試みるべき療法と考える.
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