日本皮膚科学会雑誌
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抗nRNP抗体単独陽性例の臨床的特徴と経過について
佐藤 伸一竹原 和彦相馬 良直玉木 毅五十嵐 敦之菊池 かな子土田 哲也石橋 康正
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1992 年 102 巻 1 号 p. 13-

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抄録

進行性全身性硬化症(progressive systemic sclerosis;PSS),全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE),多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis/dermatomyositis;PM/DM),混合性結合組織病(mixed connective tissue disease;MCTD)の各診断基準を用いて,抗nRNP抗体の臨床的意義,同抗体陽性例の予後及び経過を明らかにするため,抗nRNP抗体単独陽性54例について解析した.経過観察期間が1年以上の27例に対しては,1)初診時,2)最終診察時,3)累積的に診断,臨床症状及び臨床検査値の推移を解析した.初診時診断は多様であり,いずれの診断基準をも満たさない例が17例(31.5%),MCTD診断基準合致例16例(30.0%),古典的膠原病診断基準合致例21例(38.9%)とほぼ同数の3群に分けられた.臨床症状の推移については,SLE及びPM/DM的症状は一過性に出現し,PSS的症状は持続的に出現する傾向がみられた.腎疾患は54例中3例(5.6%)に認められ,死亡例は54例中1例(1.9%)のみであった.経過についても非常に多様であったが,初診時いずれの診断基準をも満たさない例は累積的には重複症状を呈し,MCTDの診断基準に合致する傾向にあり,初診時MCTDと診断された例は累積的にはさらに重複症状を増す傾向にあった.これに対し,初診時単一膠原病と診断された例では,1例を除き累積的にも重複症状はみられなかった.累積的には27例中13例(48.1%)がMCTDの診断基準を満たしたが,累積的にみてもundifferentiated connective tissue disease(UCTD),PSS,SLEにとどまる例も少なからず存在した.以上より,抗nRNP抗体単独陽性例は予後良好であるが,診断,経過共に非常に多様であることが示唆された.

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© 1992 日本皮膚科学会
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