日本皮膚科学会雑誌
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102 巻, 1 号
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  • 須賀 康
    1992 年 102 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    高分子量タンパク分解酵素(プロテアソーム)は,近年新たに発見された非ライソゾーム系酵素のひとつである.我々はウイスター系ラット皮膚より,硫安分画,Phenyl Sepharose疎水性カラムクロマトグラフィー,HPLCゲル濾過を用いて本酵素の分離精製に成功し,その性状について詳細に検討した.その結果,①本酵素は分子量がゲル濾過上約75万,通常の電気泳動では単一バンドを示し,SDS存在下の電気泳動にては分子量約2.0万から3.5万の間に4~5本のバンドが認められた.二次元電気泳動においては,pI3からpI10の範囲に約15~20個のコンポーネントが認められた.②電子顕微鏡により本酵素の形状を観察したところ,本酵素分子は中心に約30~50Åの穴を有するドーナツ型,左右対称性構造を有する直径約150Åの環状粒子であった.③本酵素はセリンプロテアーゼの基質であるSuccinyl-leucyl-leucyl-valyl-tyrosine-methylcoumarinamide (SLLVT-MCA)に最も高い基質特異性を示した.④本酵素はanion detergentの一つであるsodium dodecyl sulfate(SDS),飽和脂肪酸のpalmitic acidや不飽和脂肪酸のarachidonic acidなどで強く活性化された.⑤二価金属イオンのCa2+で活性化されたが,Cu2+,Co2+,Hg2+,Zn2+などでは逆に不活化された.⑥各種酵素阻害剤の本酵素活性に及ぼす影響を検討したところ,セリンプロテアーゼ阻害剤であるDFP添加によって最も強い活性抑制が認められた.システインプロテアーゼ阻害剤であるN-ethylmaleimide(NEM),iodoacetamide(IA),leupeptinやセリン,システインプロテアーゼ両方の阻害剤であるchymostatinによっても活性が抑制された.⑦本酵素は40℃までは熱安定性を示したが,60℃,30分の加熱によりほぼ完全に失活した.⑧皮膚組織を1.0M KCIを用いて表皮と真皮に分離し,其々の酵素活性を測定したところ,表皮は真皮の約6倍を高い活性を示した.⑨ポリクローナル抗体を作製して免疫組織学的検索を行ったところ,本酵素は表皮細胞質に主として分布することが明らかにされた.以上より,本酵素はセリン残基とシステイン残基を活性中心に有する中性プロテアーゼで,皮膚においては主として表皮に存在しており,脂肪酸によりその活性が調節されている可能性が示唆された.
  • 佐藤 伸一, 竹原 和彦, 相馬 良直, 玉木 毅, 五十嵐 敦之, 菊池 かな子, 土田 哲也, 石橋 康正
    1992 年 102 巻 1 号 p. 13-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    進行性全身性硬化症(progressive systemic sclerosis;PSS),全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE),多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis/dermatomyositis;PM/DM),混合性結合組織病(mixed connective tissue disease;MCTD)の各診断基準を用いて,抗nRNP抗体の臨床的意義,同抗体陽性例の予後及び経過を明らかにするため,抗nRNP抗体単独陽性54例について解析した.経過観察期間が1年以上の27例に対しては,1)初診時,2)最終診察時,3)累積的に診断,臨床症状及び臨床検査値の推移を解析した.初診時診断は多様であり,いずれの診断基準をも満たさない例が17例(31.5%),MCTD診断基準合致例16例(30.0%),古典的膠原病診断基準合致例21例(38.9%)とほぼ同数の3群に分けられた.臨床症状の推移については,SLE及びPM/DM的症状は一過性に出現し,PSS的症状は持続的に出現する傾向がみられた.腎疾患は54例中3例(5.6%)に認められ,死亡例は54例中1例(1.9%)のみであった.経過についても非常に多様であったが,初診時いずれの診断基準をも満たさない例は累積的には重複症状を呈し,MCTDの診断基準に合致する傾向にあり,初診時MCTDと診断された例は累積的にはさらに重複症状を増す傾向にあった.これに対し,初診時単一膠原病と診断された例では,1例を除き累積的にも重複症状はみられなかった.累積的には27例中13例(48.1%)がMCTDの診断基準を満たしたが,累積的にみてもundifferentiated connective tissue disease(UCTD),PSS,SLEにとどまる例も少なからず存在した.以上より,抗nRNP抗体単独陽性例は予後良好であるが,診断,経過共に非常に多様であることが示唆された.
  • 神崎 寛子, 上枝 万純, 荒田 次郎
    1992 年 102 巻 1 号 p. 23-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    ヘアダイにより生じたと考えられる全身汎発疹を報告する.原発巣と考えられる髪際部などの染毛剤付着部位の皮疹は,滲出傾向の強いものから痒疹を認めるもの,粃糠様鱗屑あるいは瘙痒のみ認めるものなど種々認められる.汎発疹も紅斑・丘疹・小水庖の混在する局面,鱗屑を伴う紅斑局面,浮腫性紅斑,痒疹結節など様々である.これらの症例は,パッチテストによりPPDをはじめとするヘアダイ成分で陽性を示したことおよびヘアダイの変更,中止により皮疹が軽快しているという臨床経過によりヘアダイによる汎発疹と診断した.ヘアダイ成分に高度に感作された状態の個体で,経皮吸収されたPPDなどのヘアダイ成分が血行性に散布し皮疹を生じたものと考えている.
  • 大山 克巳
    1992 年 102 巻 1 号 p. 31-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    スギ花粉飛散シーズン中に顔面の皮膚炎を生じた5例について,スギ花粉を用いたasisパッチテスト,スクラッチパッチテストそして皮内テストを施行した.症例1は唯一スギ花粉のasisパッチテストが陽性である事よりスギ花粉が原因と考えた.症例2,3,4は①asisパッチテストが陰性であるものの,スクラッチパッチテストが陽性である事②毎年スギ花粉の飛散シーズンに顔面にのみ皮膚炎が出現し,それ以外のシーズンに皮膚炎が出現しない事,③鼻炎症状の増悪とともに皮膚炎も増悪した事よりスギ花粉が原因と考えた.これら4症例は遅延型アレルギーにより発症したものと推定した.症例5は鼻症状,眼症状が同時に出現,皮膚炎の増悪とともにそれらの症状も増悪し,わずか3時間の間に皮膚炎が完成した点が特異であった.つまり3症状を突然同時に発症させる因子が出現した可能性が高く,その因子としてスギ花粉が最も考えやすい.その発症機序としてIgEを介したCutaneous late phase reactionにより発症したものと推定した.
  • 松岡 緑, 庄田 裕紀子, 磯ノ上 正明, 東山 麻里, 滝尻 珍重, 山村 弟一, 岡田 奈津子, 吉川 邦彦
    1992 年 102 巻 1 号 p. 41-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    64歳女性.約10年前より上肢に紅斑が出現し,次第に拡大した.数年後から臀部,下肢,側胸部に皮膚腫瘤が出現,その都度外科にて切除,肉腫と診断され化学療法,局所放射線療法を受けた.1990年2月腰痛及び体重減少が出現し,3月当科初診.腹部の小腫瘤の組織標本で,異型性に富んだ小円形細胞に混じって大型分葉核を持つ異型リンパ球の浸潤を認め,large multilobated cell typeの悪性リンパ腫と診断した.腫瘍細胞の表面マーカーは検索した限りでは,T細胞系,B細胞系のいずれも陰性であったが,大型細胞の一部にCD25,CD30(Ki-1)陽性所見を得た.入院後,腹腔内に径4cmの腫瘤をみとめ,便潜血陽性と強度の貧血も出現したため, VEPA-Pepleo変法の化学療法と中等量の局所放射線療法を施行し,腹腔内腫瘤は消失,皮膚にわずかに浸潤を伴う紅斑が散在するのみとなった.その後も腫瘤の再発や皮疹の増悪をみず,全身状態はきわめて良好である.皮膚原発のmultilobated lymphomaは,これまで本邦における報告例がなく極めて稀な疾患と考えられる.
  • 赤松 浩彦, Christos C. Zouboulis, Constantin E. Orfanos
    1992 年 102 巻 1 号 p. 47-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    Testosterone(以下Tと略す),5α-dihydrotestosterone(以下DHTと略す)の皮脂腺の増殖に及ぼす影響を,人の大腿部より分離した皮脂腺を組織片培養して得られた脂腺細胞を用いて検討した.その結果,Tは濃度依存性に脂腺細胞の増殖を抑制し,一方DHTは僅かながら増殖を促進することがin vitroで判明した.皮脂腺が多数の内分泌因子によって支配されていることは周知の事実であり,個々の内分泌因子がどのように皮脂腺に影響を及ぼしているかは大変興味深い点である.この組織培養法は,個々の内分泌因子の皮脂腺に及ぼす影響を細胞レベルで,しかも定量的に扱える点で非常に優れた実験手段であると考えられた.
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