日本皮膚科学会雑誌
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悪性黒色腫群と非黒色腫群の尿中5-S-Cysteinyldopa―新Stage・新TNM分類との相関および免疫化学療法の効果判定―
川浪 耐子藤沢 重樹森嶋 隆文
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1992 年 102 巻 9 号 p. 1119-

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抄録

悪性黒色腫群では尿中5-S-CD値と新Stage分類・新TNM分類との相関,経時的尿中5-S-CD値の測定による免疫化学療法の効果判定の有用性につき検討し,非黒色腫群では色素性腫傷別尿中5-S-CD値を測定し,この群を健常群と考えて尿中5-S-CD値の年齢・性差や季節別変動との相関について検索し,以下の興味ある知見を得た.1.非黒色腫群1)黒色腫と鑑別を要するacquired melanocytic nevus,若年性黒色腫,色素性基底細胞上皮腫,Bloch II型黒色上皮腫などの平均尿中5-S-CD値はほぼ正常値内であった.2)尿中5-S-CD値は全年齢を通して男が女に比して有意に高値で,年齢別には幼小児期に最も低く,30歳までゆるやかに上昇し,以降,加齢による変動はない.3)40歳代~70歳代では夏秋は冬春に比して有意に高値であったが,いずれの季節でも正常値内であった.2.黒色腫群 1)新Stageの進行とともに尿中5-S-CD値は段階的に高値となるが,StageⅠ・Ⅱ群と健常人群との間に差はない.2)新StageⅢ群の原発巣の病型間に尿中5-S-CD値は有意差はない.N0群全例が境界値内で,異常値はN1群12%,N2群で60%であった.3)disease free症例の経時的尿中5-S-CD値は境界値以下を変動していた.4)新StageⅢからStageⅣ移行例では尿中5-S-CD値が400μg/day以上の異常値を示して転移が発見されるまでの期間は9日~45日,1,000μg/day以上の異常高値を示すまでの期間は25日~1,200日,異常高値を示して死亡するまでの期間は45日~180日であった.5)免疫化学療法の臨床効果例では尿中5-S-CD値が治療期間中異常値を越えてピークを示し,無効例,術後の併用療法中,術前のDAV単独療法例では境界値以下を変動していた.以上の結果から,年齢・性差や季節を問わず,尿中5-S-CD値を経時的に測定することは悪性黒色腫例の原発巣のStage分類,転移の有無とその広がり,外科的療法や免疫化学療法の効果判定,予後などを判断するうえにきわめて有用な腫瘍マーカーであると考えられた.

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© 1992 日本皮膚科学会
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