日本皮膚科学会雑誌
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アトピー性皮膚炎患者栂指腹における精神性発汗と,それに及ぼす諸因子の影響について
川合 博子吉池 高志相川 洋介小川 秀興
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1993 年 103 巻 1 号 p. 1-

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抄録

アトピー性皮膚炎(AD)患者における発汗については,従来,低下説,増加説,あるいは正常説と見解が大きく分かれている.これは,対象の選択,測定法とその信頼性,発汗誘発法,結果の解釈などの違いに基づくものと考えられる.そこで,我々は,新しく開発された局所発汗量連続記録装置を導入して,AD患者60名の発汗量を定量すると同時にADにおける諸因子と発汗量との相関を詳細に検討した.方法は,対側手握りおよび暗算によって誘発される発汗量を母指腹に装着した湿度センサーによってチャート上に記録し,発汗量を算出した.その結果,まず尋常性魚鱗癬合併群においては非合併群に比べ,暗算発汗の低下(合併群0.10±0.05ml/min,非合併群0.28±0.04ml/min,p<0.01)が認められた.また,手湿疹合併群では暗算発汗,握り発汗ともに非合併群と比べ低下していた(握り発汗:手湿疹合併群0.07±0.03ml/min,非合併群0.21±0.04,p<0.01).以上,従来なされてきたAD患者の発汗量の多寡についての論議は,各種因子,特に測定した皮膚の部位,皮膚の状態など異なった因子を充分整理せずに測定.比較がなされた所産と考えた.

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© 1993 日本皮膚科学会
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