日本皮膚科学会雑誌
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103 巻, 1 号
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  • 川合 博子, 吉池 高志, 相川 洋介, 小川 秀興
    1993 年 103 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)患者における発汗については,従来,低下説,増加説,あるいは正常説と見解が大きく分かれている.これは,対象の選択,測定法とその信頼性,発汗誘発法,結果の解釈などの違いに基づくものと考えられる.そこで,我々は,新しく開発された局所発汗量連続記録装置を導入して,AD患者60名の発汗量を定量すると同時にADにおける諸因子と発汗量との相関を詳細に検討した.方法は,対側手握りおよび暗算によって誘発される発汗量を母指腹に装着した湿度センサーによってチャート上に記録し,発汗量を算出した.その結果,まず尋常性魚鱗癬合併群においては非合併群に比べ,暗算発汗の低下(合併群0.10±0.05ml/min,非合併群0.28±0.04ml/min,p<0.01)が認められた.また,手湿疹合併群では暗算発汗,握り発汗ともに非合併群と比べ低下していた(握り発汗:手湿疹合併群0.07±0.03ml/min,非合併群0.21±0.04,p<0.01).以上,従来なされてきたAD患者の発汗量の多寡についての論議は,各種因子,特に測定した皮膚の部位,皮膚の状態など異なった因子を充分整理せずに測定.比較がなされた所産と考えた.
  • 岩崎 雅, 米元 康蔵, 勝岡 憲生, 竹崎 伸一郎, 西山 茂夫, 島本 由紀子, 舩渡 忠男
    1993 年 103 巻 1 号 p. 5-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    小児Ki-1リンパ腫の2症例を報告し,臨床的,組織学的,免疫組織化学的,電顕的およびDNA解析(サザンブロット法)にて検討した.症例1:15歳,男子.発熱に伴って,体幹,顔面,四肢に紅色丘疹が一部に小結節を混じて播種状に出現し,同時にリンパ節腫脹がみられた.皮膚,リンパ節いずれも多形性を示すびまん性の腫瘍細胞の増殖がみられ,リンパ節において赤血球貪食像をみる異型細胞を散見した.病理組織学的には従来の“malignant histiocytosis”に相当すると考えられ,化学療法を施行するも全経過7ヵ月で死亡した.症例2:12歳,男子.鼻尖部にドーム状隆起性腫瘤が出現し,reticulum cell sarcomaとの診断のもと,放射線療法を施行し,腫瘤の消失をみた.その後も時期を置いて孤在性に体幹,四肢に腫瘤の出現をみる.病変はいずれの場合も皮膚に限局し,経過は12年に至る.2症例は免疫学的な検討から腫瘍細胞がCD30陽性で,ヘルパーT細胞としての性格を有し,「小児Ki-1リンパ腫」と言えるものであるが,臨床像および予後の点で著しい相違がみられた.また,組織学的,免疫組織化学的および電顕的に両者を詳細に比較検討したところ,前者には腫瘍細胞の集簇巣が明瞭に存在し,反応性の細胞の混在に乏しく,一方後者では腫瘍細胞と反応性の細胞とが概して渾然として病変を構成しており,この傾向は病変が大きくなればなるほど著明であった.2症例の比較において,宿主の反応,特に腫瘍細胞と反応性の細胞との関係と,予後との関連が示唆された.
  • 秋山 尚範, 妹尾 明美, 多田 讓治, 荒田 次郎, 小田 慈
    1993 年 103 巻 1 号 p. 19-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    生後6ヵ月の乳児に,何ら誘因なく全身に丘疹が密生し,丘疹の組織像では類上皮細胞肉芽腫像を認め,全経過3ヵ月で皮疹はすべて自然消失した症例を報告した.免疫組織化学的検討では肉芽腫内の細胞はS-100蛋白陰性,肉芽腫の辺縁ではHLA-DRが発現しており,helper T細胞優位であった.電顕的検討では肉芽腫内には細胞質内に膜構造をもつ大小の高電子密度顆粒を有する類上皮細胞及び空胞状となった顆粒を有する類上皮細胞を認めた.類上皮細胞内にはBirbeck顆粒,脂肪滴は認められなかった.腺病性苔癬,組織球増殖症,汎発性環状肉芽腫,Blau症候群は否定できると考えた.自験例は現時点ではサルコイドーシスが最も可能性があるが,皮膚所見のみのため確定診断はできない.乳児サルコイドーシスは,皮膚症状で初発し,数ヵ月から数年の経過で眼,関節症状が出現してくる例が多く報告されている.我々の症例についても,今後,眼,関節症状等の発現について厳重に経過を観察すべきであると考えた.
  • 二瓶 義道, 長谷川 隆哉, 佐藤 守弘
    1993 年 103 巻 1 号 p. 27-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    症例:80歳,男.1989年頃よりほぼ全身,特に四肢伸側に紅斑・小丘疹および小水庖が多発増悪した.組織学的に表皮下水庖で,蛍光抗体法では基底膜部にC3の線状および顆粒状の沈着をみた.血清中には抗基底膜抗体を認め,臨床像からvesicular pemphigoidと診断した.血清中M蛋白の存在と骨髄異型形質細胞の増加より多発性骨髄腫を合併していた.治療:ステロイド内服投与開始後,皮疹部からMRSAが検出された.それに対しイソジンゲルR外用を行ったところ接触過敏症を生じた.ステロイドと感受性のある抗生物質を投与して皮疹は改善傾向を認めたが,MRSAは皮疹部に常在化していた.MRSAに対して3%酢酸加親水ワセリンを外用したところやや有効で,瘙痒改善のため3%酢酸ワセリンにリンデロンDP軟膏Rを混合使用して菌は検出されなくなった.酢酸のMRSAに対する最小発育阻止濃度は2mg/ml(0.2%)で,酢酸ワセリンは広範な皮膚MRSA感染症例では有用な治療法と考えられた.
  • 桧垣 修一, 長谷川 義典, 豊本 貴嗣, 宮崎 克子, 諸橋 正昭, 山岸 高由
    1993 年 103 巻 1 号 p. 33-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    十味敗毒湯とテトラサイクリン系抗生物質の一つであるミノサイクリンのPropionibacterium acnesに対する抗リパーゼ作用を検討した.5mg/ml,10mg/ml量の十味敗毒湯及び0.5μg/ml,1μg/ml量のミノサイクリンの一方あるいは両方を添加したPYG-トリプチリン培地にP. acnesを接種し,産生される酪酸およびプロピオン酸量をガスクトマトグラフィーで測定した.この結果,コントロールと比較した場合,両者添加培地上のP. acnesのプロピオン酸,酪酸産生量の低下度は十味敗毒湯あるいはミノサイクリン単独添加群のそれよりも強かった.このことから,P. acnesに対する両者間の抗リパーゼ作用には,協同効果の存在が示唆された.さらに,1MIC量(=50mg/ml)以下の十味敗毒湯添加培地に発育したP. acnesの形態的変化を走査電顕及び透過電顕で観察した.走査電顕による観察では,十味敗毒湯1MIC量添加培地に発育したP. acnesの表面構造的な変化は認められなかった.一方,透過電顕所見では十味敗毒湯1/8MIC量添加培地上に発育したP. acnesの顕著な変性壊死像が見られ,テトラサイクリン系抗生物質と同等の低濃度でもP. acnesリパーゼ産生能への阻害が示唆された.
  • 1993 年 103 巻 1 号 p. 39-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
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