日本皮膚科学会雑誌
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顔面皮疹の高度なアトピー性皮膚炎
多田 讓治戸井 洋一郎秋山 尚範下江 敬生荒田 次郎
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1993 年 103 巻 11 号 p. 1429-

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抄録

顔面全体に高度な皮疹を有する患者64例(男性28例,女性36例)において,顔面皮疹の性状,血中好酸球数,血清IgE値,ヤケヒョウヒダニ特異IgE抗体,抗核抗体,アトピー性皮膚炎発症から顔面皮疹の増悪までの期間,増悪に関与した因子,光線過敏性,金属過敏性,顔面皮疹からの黄色ブドウ球菌の検出,眼科的合併症について検討した.顔面皮疹には,一部にでも苔癬化がみられるタイプと,顔面のどの部位にも苔癬化がみられず■漫性の発赤腫脹のみの2つのタイプが観察された.顔面皮診の高度な患者は同時に重症型であり,発症から10年以上経たものが多く,さらに,好酸球数も多く,血清IgE値およびヤケヒョウヒダニ特異IgE抗体も著明に高いものが多かった.抗核抗体も低倍ではあるが正常人に比し陽性率が高く,金属過敏性(ニッケル,クロム),光線過敏性でも比較的高い陽性率であった.顔面皮疹の増悪には,外用剤(ステロイドおよび非ステロイド剤),化粧品,シャンプー・石鹸などの日用品,ウイルス感染,ステロイド剤外用の中止など,様々なものが確認された.顔面病変から培養しえた患者全員から黄色ブドウ球菌が検出され,黄色ブドウ球菌も増悪因子と考えられた.白内障・網膜剥離も約3割に合併しており,白内障がより高率であった.以上の結果より,顔面皮疹の増悪には,多種類の要因が関与していると思われ,顔面皮疹の増悪以前に,すなわち,アトピー性皮膚炎が重症化する以前に,個々の症例において,きめ細かい検査・診断・治療が重要であると考えられる.

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© 1993 日本皮膚科学会
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