日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
n-Hexadecaneにより増殖活性の亢進したモルモット表皮に対するPUVA 1回処置の細胞動態学的作用
能川 昭夫
著者情報
ジャーナル 認証あり

1993 年 103 巻 13 号 p. 1719-

詳細
抄録

数種の表皮細胞動態指標の経時的変動の解析により,n-hexadecane(n-HD)外用により増殖活性の亢進したモルモット表皮に対する8-MOP+UVA(PUVA)1回処置の作用を検討した.表皮の細胞動態指標として,フローサイトメトリーにより測定されたS期細胞の分画(S分画)とG2+M期細胞の分画(G2+M分画),ブロモデオキシウリジン標識指数(LI),核分裂指数(MI)およびFeulgen-マイクロスペクトロフォトメトリーにより測定された表皮の基底層および最上部2層の単位長さ当りの4C細胞数(G2期細胞数)を用いた.対照に比べて,PUVA処置後の表皮ではS分画は6時間後から72時間後まで増加し,24時間後にピークを示した.LIは照射量により4時間後ないし12時間後まで減少したのち増加し,24時間後から72時間後まで有意に増加した.G2+M分画は24時間後まで対照レベルないし軽度の増加を示したが,48時間後から72時間後まで著しい増加を示した.MIは24時間後まで軽度の減少を示したのち対照レベルに戻り,168時間後には有意に増加した.表皮の基底層の単位長さ(1cm)当りの4C細胞数は24時間後までは対照レベルと同程度であったが,48時間後には増加した後対照レベルに戻った.対照表皮の最上部2層には全経過を通して4C細胞は認められなかったが,PUVA 処置部の表皮の最上部2層には12時間後から72時間後まで4C細胞が出現した.得られた結果から,n-HD塗布後PUVA 1回処置を行った表皮では,PUVA処置後一定期間G2期細胞の蓄積が起こるものと推測された.これらの蓄積したG2期細胞の多くは細胞分裂サイクルから離脱して静止状態にあるG2Q細胞と考えられ,表皮の基底層から上層へ移動した後皮膚の表面から排出されることが示唆された.

著者関連情報
© 1993 日本皮膚科学会
次の記事
feedback
Top