日本皮膚科学会雑誌
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103 巻, 13 号
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  • 能川 昭夫
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1719-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
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    数種の表皮細胞動態指標の経時的変動の解析により,n-hexadecane(n-HD)外用により増殖活性の亢進したモルモット表皮に対する8-MOP+UVA(PUVA)1回処置の作用を検討した.表皮の細胞動態指標として,フローサイトメトリーにより測定されたS期細胞の分画(S分画)とG2+M期細胞の分画(G2+M分画),ブロモデオキシウリジン標識指数(LI),核分裂指数(MI)およびFeulgen-マイクロスペクトロフォトメトリーにより測定された表皮の基底層および最上部2層の単位長さ当りの4C細胞数(G2期細胞数)を用いた.対照に比べて,PUVA処置後の表皮ではS分画は6時間後から72時間後まで増加し,24時間後にピークを示した.LIは照射量により4時間後ないし12時間後まで減少したのち増加し,24時間後から72時間後まで有意に増加した.G2+M分画は24時間後まで対照レベルないし軽度の増加を示したが,48時間後から72時間後まで著しい増加を示した.MIは24時間後まで軽度の減少を示したのち対照レベルに戻り,168時間後には有意に増加した.表皮の基底層の単位長さ(1cm)当りの4C細胞数は24時間後までは対照レベルと同程度であったが,48時間後には増加した後対照レベルに戻った.対照表皮の最上部2層には全経過を通して4C細胞は認められなかったが,PUVA 処置部の表皮の最上部2層には12時間後から72時間後まで4C細胞が出現した.得られた結果から,n-HD塗布後PUVA 1回処置を行った表皮では,PUVA処置後一定期間G2期細胞の蓄積が起こるものと推測された.これらの蓄積したG2期細胞の多くは細胞分裂サイクルから離脱して静止状態にあるG2Q細胞と考えられ,表皮の基底層から上層へ移動した後皮膚の表面から排出されることが示唆された.
  • 山川 有子
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1727-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
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    横浜市立大学医学部附属病院皮膚科外来に通院中のベーチェット病患者について,tumor necrosis factor-α(TNF-α),interleukin-6(IL-6),interleukin-8(IL-8)の血中濃度,および末梢血単核球におけるTNF-α,IL-6,IL-8の産生能を,enzyme linked immunosorbent assay(ELISA)を用いて検討した.その結果,lipopolysaccharide(LPS)無刺激下,刺激下培養のいずれにおいてもベーチェット病の活動期ではTNF-α,IL-6,IL-8の産生能が有意に上昇していた.そこで患者末梢血単核球におけるTNF-α遺伝子の発現をNorthern blotting法により解析したところ,活動期の患者では,非活動期の患者および健常者に比較して,LPS刺激による末梢血単核球のTNF-α遺伝子の発現が増強していた.以上より,ベーチェット病の皮膚症状における活動性とTNF-α,IL-6,IL-8の産生能との間には,詳細は不明であるが何らかの関連性があるものと推測された.
  • 尹 浩信, 藤本 学, 佐藤 伸一, 玉木 毅, 菊池 かな子, 五十嵐 敦之, 相馬 良直, 竹原 和彦, 石橋 康正
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1735-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    過去に我々は,従来の診断基準では評価できない強皮症軽症例,早期例,およびRaynaud症状を主症状とし強皮症と一連の病態であると考えられるscleroderma spectrum disorders(以下SSD)に対して,ポイント制による診断法を考案し,報告した.今回このポイント制診断基準案と従来の診断基準の特徴および有用性を明確にすることを目的として,自験強皮症患者97例を対象として,ポイント制診断基準案,ARA診断基準,厚生省診断基準,厚生省score診断を用いて,各々の診断基準の合致例,非合致例を抽出し,検討を加えた.ポイント制診断基準案では11例(11.3%),ARA診断基準では17例(17.5%),厚生省診断基準では11例(11.3%),厚生省score診断では16例(16.5%)が非合致例となった.ARA診断基準,厚生省診断基準,厚生省score診断では診断基準項目中sclerodactyly 1項目のみを満足するBarnett分類type 1の症例およびpulmonary fibrosis 1項目のみを満足するsine sclerodermaの症例が非合致例となったのに対して,ポイント制診断基準案では特異抗核抗体陰性かあるいはRaynaud現象が非典型的でかつnail-fold bleeding(NFB)を欠如する非典型例が非合致例となった.また従来の診断基準(ARA診断基準,厚生省診断基準,厚生省score診断)非合致例の65%から73%はポイント制診断基準案にて合致例となり,逆にポイント制診断基準案非合致例の約半数は従来の診断基準にて合致例となった.以上の結果より強皮症の診断に際しては従来の診断基準とポイント制診断基準案を組み合わせて利用することが望ましいと考えられた.
  • 菊池 新, 清水 宏, 原田 敬之, 西川 武二
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1743-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    慶大皮膚科において1970年~1991年の22年間に経験し,組織学的検索をしえた皮膚悪性腫瘍989例につき統計学的検討を加えた.上皮系,間葉系,汗腺系,毛嚢系,色素細胞系,網内系,および転移性皮膚悪性腫瘍につきそれぞれの症例数の分布,年代による症例数の変化などを検討した.組織学的検索を行った皮膚悪性腫瘍の数は年々増加しており,ほとんどの腫瘍において症例数の増加が認められたが,疾患分布には明らかな年代による差は無かった.文献的に10年以上の統計学的観察を行った本邦他施設の報告との比較検討も行った.
  • 新井 春枝, 菅谷 和江, 浅井 寿子, 関根 敦子, 近藤 滋夫, 衛藤 光, 西山 茂夫
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1747-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    第1報において,全身性エリテマトーデス(SLE)に蓄積する組織球(Mφ)について報告し,細胞質内の顕粒をリポフスチンと同定した,今回,我々はこのリポフスチン(ceroid)の生成機序について考察した.脂腺毛嚢―真皮境界部に免疫複合体(IC)およびV5b-9複合体(MAC)の沈着をみた.かつ脂腺の構造および基底膜に様々な変化が観察された.凍結標本の脂腺細胞内に好酸性脂質(soluble and insoluble acidic linid)の形成が見られた.また,脱パラフィン標本においてコロイド鉄反応およびマッソン染色陽性の微細な不溶性顆粒が観察された.この不溶性顆粒を過酸化脂質蛋白質複合体(ceroid-like state:Ball)とみなした.崩壊した脂腺内外に自家螢光を発するceroidを含有するMφ(ceroid-laden Mφ)が存在した.小動脈にceroid-laden Mφ,ICおよび中性脂質等による塞栓を観察した.一部のMφ内に免疫グロブリンおよび補体の沈着を見た.SLEの皮膚病変内にceroid-laden Mφが形成され,蓄積する機序を病理免疫組織化学所見から以下のごとく考察した.1.単球・組織球の遊走および活性化はIC,MAC,過酸化脂質およびceroid-like state にある過酸化脂質蛋白質複合体によって惹起される.2.活性酸素種は活性化Mφ,酸化されたICおよび灌流障害(完全または不完全虚血・再灌流)などから生成される.3.酸化される脂質は主に脂腺および皮下脂肪である.4.脂腺および皮下脂肪由来の脂質およびIC由来の蛋白質が酸化され,ceroid-like stateの過酸化脂質蛋白質複合体となる.5.Mφは取込んだceroid-like stateの過酸化脂質蛋白質複合体をさらに酸化し,ceroidを生成する.
  • 小川 忠丈, 勝岡 憲生, 西山 茂夫
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1767-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    湿疹患者(主にアトピー性皮膚炎)の病変部(主に顔面)と正常部(主に前腕)皮膚から細菌を採取した.対照として,健常人の顔面と前腕部皮膚から細菌を採取した.細菌の採取方法はプレート接触法により,マンニット・食塩培地を用いて,Staphylococcus(S)属細菌を選択的に得た.S属細菌をコロニー数計測後単離して,コアグラーゼおよびAPIシステム・19項目の生化学的性質に基づいて,菌種を同定した.結果,重症のアトピー性皮膚炎病変部から多数のS. aureusが検出され,従来の結果と一致した.患者の正常な前腕部,及び健常人前腕部からも,S. aureusが高率に検出された.colony forming unit(CFU)/10cm2の単位で表した平均値は、患者群が12.96±28.18,健常人群が0.50±1.78で5%の危険率で有意差が認められた.薬剤感受性を総数124株について調べた結果,患者から単離された14株が抵抗性を示した.ペニシリン系の抗生剤に対する感受性が低く,セフェム系に対する感受性が高かった.メチシリンに対する抵抗性を示すMRSAは検出されなかった.プレート接触法により少数の細菌叢からなる前腕部皮膚においても,S属細菌叢の定量的研究が可能であった.
  • 酒井 智恵, 大川 司, 太田 幸則, 増澤 幹男, 西山 茂夫, 太田 幸宏
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1777-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    外頸動脈のrecombinant Interleukin-2(以下rIL-2)one shot動注療法にて軽快した悪性血管内皮細胞腫の一例を経験した.症例は69歳,女性で,1991年5月より左側頭部に腫瘤が出現し,拡大した.左外頸動脈にカテーテルを留置し,rIL-2の輸注ポンプによる持続動注を開始した.rIL-2局注療法も併用し,約4ヵ月間治療を継続したが病勢を抑えることができなかった.動注部からの色素注入試験において持続動注速度(5ml/hr)では病変部へrIL-2の拡散が少ないことが判明した.注入圧の高いone shot動注に変更したところrIL-2は耳周囲から病変部にかけて広範囲に拡散し,漸次,軽快していった.動注療法は8ヵ月間持続でき,この経験により,外頸動脈からのone shot 動注は,長期治療が必要な広範囲難治性病変に適していると考えられる.
  • 森 聖, 新田 悠紀子, 安江 隆, 梅村 錩三, 大橋 勝
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1783-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    28歳,女性.1992年3月に伝染性紅斑に罹患し,皮疹は約20日で消退した.その後妊娠し5月に妊娠2ヵ月と診断されたが,腹部超音波検査で胎児死亡が確認されたため,妊娠3ヵ月で娩出された.Human parvovirus B19(以下HPV B19と略す)につき検索した.血清抗体はELISA法でIgG抗体,IgM抗体ともに陽性,polymerase chain reaction 法(以下PCR法と略す)により,血清中にHPV B19 DNAが検出された.更に胎盤についてもin situ hybridizationを用いて検索し,陽性所見が認められた.以上より,HPV B19感染による胎児死亡と考え,HPV B19と妊娠につき考察した.本症例のような妊娠前の感染による児の異常は知られておらず,極めてまれな症例と思われる.
  • 市川 栄子, 渡辺 晋一, 大塚 藤男
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1789-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    ケラトアカントーマの特徴を明らかにする目的で,15例のケラトアカントーマについて腫瘍細胞におけるサイトケラチン,インボルクリンの発現をそれぞれに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に検討した.ケラトアカントーマは外毛根鞘細胞全体を染色する抗体および外毛根鞘内側を染色する抗体で陽性に染色され,本腫瘍は毛嚢峡部以下の外毛根鞘へ分化する腫瘍であることが示唆された.
  • 崔 昌益, 高橋 昌江, 手塚 正
    1993 年 103 巻 13 号 p. 1795-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    角層細胞の剥離に関与するプロテアーゼを検討する目的で正常足底角層凍結乾燥粉末を0.1M Tris-HCl(PH 7.2)bufferで抽出し,0.1%カゼイン含有SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行い,カゼインを消化させたところ既に報告されている分子量25Kdのカゼインを消化する低分子プロテアーゼのほかに分子量約75Kdの高分子プロテアーゼの存在が明らかになった.この高分子プロテアーゼは温度に対して高い安定性を示し,至適pHは弱アルカリ性であった.この高分子プロテアーゼのカゼイン消化能はAprotininとPMSFで阻害されたがLeupeptin,Chymostatin,EDTA,硫酸亜鉛では阻害されず,このことからセリンプロテアーゼと考えられた.この高分子プロテアーゼは内因性のセリンプロテアーゼであるPlasmin,外因性のセリンプロテアーゼであるSubtilisinなどとは分子量だけでなく種々のInhibitorsに対する反応性も異なっていて角層固有のプロテアーゼである可能性が示唆された.尚,今回の実験から足底角層中に低分子プロテアーゼの他に73Kdのプロテアーゼが存在する可能性も示された.
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