日本皮膚科学会雑誌
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湿疹患者と健常人の皮表細菌叢比較研究―Staphylococcus属の分布を中心に―
小川 忠丈勝岡 憲生西山 茂夫
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1993 年 103 巻 13 号 p. 1767-

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抄録

湿疹患者(主にアトピー性皮膚炎)の病変部(主に顔面)と正常部(主に前腕)皮膚から細菌を採取した.対照として,健常人の顔面と前腕部皮膚から細菌を採取した.細菌の採取方法はプレート接触法により,マンニット・食塩培地を用いて,Staphylococcus(S)属細菌を選択的に得た.S属細菌をコロニー数計測後単離して,コアグラーゼおよびAPIシステム・19項目の生化学的性質に基づいて,菌種を同定した.結果,重症のアトピー性皮膚炎病変部から多数のS. aureusが検出され,従来の結果と一致した.患者の正常な前腕部,及び健常人前腕部からも,S. aureusが高率に検出された.colony forming unit(CFU)/10cm2の単位で表した平均値は、患者群が12.96±28.18,健常人群が0.50±1.78で5%の危険率で有意差が認められた.薬剤感受性を総数124株について調べた結果,患者から単離された14株が抵抗性を示した.ペニシリン系の抗生剤に対する感受性が低く,セフェム系に対する感受性が高かった.メチシリンに対する抵抗性を示すMRSAは検出されなかった.プレート接触法により少数の細菌叢からなる前腕部皮膚においても,S属細菌叢の定量的研究が可能であった.

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© 1993 日本皮膚科学会
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