抄録
56歳,女性.急性骨髄性白血病(AML)(M2)と診断され,抗白血病剤の多剤併用療法(BHAC-AMP,BHAC-DMP)により完全寛解状態であったが、体幹,四肢に小豆大~大豆大で,紅色~暗赤色の丘疹が多発してきた.皮膚生検組織において,表皮直下から真皮全層にわたり,稠密な異型白血球の浸潤がみられ,AMLの特異疹と診断した.BHAC-DMP療法(BHAC, DNR, 6MP, PSL)により末梢血および骨髄中では芽球の消失が認められたが,皮疹については無効であった.その後AB triple V療法(ACR, BHAC, VP-16, VCR, VDS)を開始したところ,8日目より皮疹は急速に退色し,消失した.以後再び末梢血および骨髄において再発が認められたが,死亡に至るまでの5ヵ月間,皮疹の再発は見られなかった.AMLに対して種々の治療が試みられているが,骨髄,末梢血だけでなく,特異疹に対しても有効である治療は少ない.本症例ではAB triple V療法が,骨髄,特異疹両者に有効であり,さらに特異疹の再発がみられなかったことから,この治療が特異疹を伴うAMLに対し試みるべき治療法の一つであると考えられた.