抄録
歯科金属アレルギーが原因と考えられた異汗性湿疹の5例を経験した.それぞれの症例に金属パッチテスト,金属内服試験を施行し血中のクロム濃度を測定した.その結果クロム内服にて異汗性湿疹が誘発されたのは5例中3例,ニッケル内服にて誘発されたのは5例中2例であった.誘発された5症例中4症例でパッチテストにおいても誘発された金属に陽性であった.クロム内服試験にて陽性であった3症例において血中クロム濃度が高値であった.血中クロム濃度が異常に高値を認めた1症例では除去した歯科金属をX線マイクロアナライザーで分析したところ大量のクロムを含んでいることが証明された.また5例中で2例で歯科金属除去により掌蹠の皮膚症状が改善した.以上より,これらの症例における異汗性湿疹の発症機序に歯科金属が関与している可能性が示唆された.