免疫抑制マウスの背部皮膚にStaphylococcus aureus ATCC29213株による感染病巣を作成した.各種外用抗菌薬を1日1回塗布し,菌接種3,5,7,10日目に接種部位の浸出液を培養した.分離S. aureusの最小発育阻止濃度(MIC)測定およびefficiency of plating(EOP)を測定した.1) ATCC29213株のEOPは,gentamicin(GM)16μg/ml 1.5×10-9,fusidic acid(FA)16μg/ml 5.1×10-7,ofloxacin(OFLX)16μg/ml 5.1×10-9,mupirocin 16μg/ml 1.0×10-6,oxacillin(MPIPC)16μg/ml 5.1×10-9であり,検索したすべての抗菌薬に対して少数の自然耐性変異菌が存在した.2) ATCC29213株をマウスに接種後,2%FA軟膏を外用5日目に採取したS. aureusの任意の8コロニーのMICはFA,MPIPCともに128μg/ml以上に上昇が認められた.接種前のS. aureus ATCC29213株,マウスに接種後2%FA軟膏5日間外用後に病巣より採取したS. aureusは,いずれもmec A gene陰性であり,コアグラーゼ型,ファージ型,β-lactamase産生能は同一であった.これらの結果はATCC29213株の内に存在する少数の自然耐性変異菌が2%FA軟骨外用により選択されたことを示している.3)各種外用抗菌薬塗布10日目に採取したS. aureusのEOPについて検討した.0.1%GM軟膏外用ではEOPはGM 16μg/ml:0.25であった.2%FA軟膏外用ではEOPはFA 16μg/ml:0.53,FA 128μg/ml:0.31,MPIPC16μg/ml:0.25であった.0.3%OFLX軟膏外用ではEOPはOFLX 16μg/ml:3.5×10-5>であった.2%mupirocin軟膏外用ではEOPはmupirocin 16μg/ml:6.8×10-4であった.4)0.1%GM軟膏と2%FA軟膏を併用すると,0.1%GM軟膏単独外用時に出現したGMの耐性菌は選択されなかった.外用10日目の時点での比較では,2%FA軟膏単独外用時に出現したFAの高度耐性菌(FA 128μg/ml含有平板に発育した菌)およびMPIPCの耐性菌は選択されなかった.以上より皮膚科領域S. aureus感染症に対する外用抗菌薬は,薬剤によっては耐性菌選択の可能性がかなりあり,それを予防する方法として,現在使用可能な外用抗菌薬のうちでは0.1%GM軟膏と2%FA軟膏を併用して用いるのが有用ではないかと考えられた.
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